普通の生活者の視点を取り戻せる、会社員の仕事も必要なのかもしれない
──会社には、どのタイミングで話した?
東京国際映画祭での上映が決まったころです。映画を撮っていることは、なんとなく話していたのですが、さすがに一般公開となると、映画監督として名前も出るし、改めて話さないといけない。まずは上司に話したところ、すごく喜んでくれて。「やれるところまでやってみて、その着地点を人事部と相談したらいい」。そう言われて、肩の荷が下りた気がしました。その後も話し合いを重ね、現在は週3日勤務の契約社員に。残りの4日で映画制作に携わる日々です。
──会社を辞めるという選択肢はなかった?
仕事は仕事で好きなんです。それとは別に「表現したい」という欲求を叶える手段が、私にとっては映画なのだと思います。
ファッションの仕事は長く携わっていることもあり、自分にとっての基盤です。作品を観た方に、「会社員の経験があるから、こんな作品が撮れるんですね」と言われたことがあって。私は自分の内面を掘り下げるよりも、世の中がどうなっているのか、俯瞰で見ていたいタイプ。なので、普通の生活者の視点を取り戻せる、会社員の仕事も必要なのかも。その分、大変ではありますが(笑)。
──これから、Wワークを始めたい人へのアドバイスは?
社内に理解してくれる味方を見つけること。あと、無理やりでも休みの日をつくること。そうしないとパンクしそうになる。私の息抜きは、もっぱら銭湯通いです!
──あなたにとって、理想の仕事(働き方)とは?
自分の好奇心が満たせて、誰かを幸せにできるものがいい。それが、映画なんだと思います。
穐山茉由◎監督・脚本/外資系ファッションブランドPR。1982年生まれ、東京都出身。外資系ファッションブランドのPRをする傍ら、30歳で映画美学校に通い、映画監督と二足のわらじをスタート。修了制作作品が田辺・弁慶映画祭で入選、『月極オトコトモダチ』が第31回東京国際映画祭(TIFF)日本映画スプラッシュ部門に選出された。