そんな佐野が、新時代のHRマネジメントを考えるために、有識者と対談を実施。今回、意見を交わしたのは、「新しい働き方の提案や雇用力を強化するサービスを開発する」として、タレンティオの前身であるキメラを共同創業した家入一真。当時はパートナー、現在はそれぞれ別事業をリードする経営者となった2人は、世の中で声高に叫ばれている「働き方改革」をどのように見ているのだろうか?
対談から飛び出たのは、企業と社員個人のフラットな関係を築くヒントだった──。
広まるべきは「働き方」ではなく「どう働きたいのか」
佐野一機(佐野):日本の働き方は、2019年をターニングポイントに大きく変化しています。なかでも、経団連やトヨタといった大きな団体や企業が次々と「終身雇用には限界がある」と明言したインパクトは、とても強いものがあったと感じているんです。
この記事で僕は「終身雇用をやめたほうがいい」と否定するつもりはありません。しかし、雇用の流動性が高まるのであれば、1社でしか通用しない功績や成功体験を持つ人材が以前よりも活躍しにくい環境になっていることは確かです。
「働く」という環境が大きく変わっている今だからこそ、今後の働き方を整理すべきだと考えています。そこで今回は、20年ほど経営者をしている家入さんと、働き方の変化や今後のあり方について話したいと思っています。
家入一真(家入):「働き方改革」という言葉が登場して以来、副業やパラレルワークなど、さまざまなワードが飛び交っていますよね。しかし、目新しい言論は出てきていない。一方で気になっているのが、働き方自体が一種のバズワードとして発信されていることです。
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佐野:「心理的安全性」のように、飛びつきたくなるようなワーディングになりつつある、ということですか?
家入:そうです。今、本当にさまざまな働き方が論じられていますが、そのたびに飛びついては「うまくいかなかった」「もういいや」となっている人が多い気がしているんです。本当に向き合うべきは「働き方」ではなく、働く人そのもの。
起業家であれ、フリーランスであれ、契約社員であれ、任せられたことをしっかりできるのであれば、雇用形態は問われないはずなので、働き方だけを論じていても仕方がない。そこで考えたいのが、企業側のスタンスです。
佐野:同感です。福利厚生の充実など、企業も社員個人と真摯に向き合う必要があります。とはいえ、すべてに向き合うことは物理的に不可能。だからこそ「こういったスタンスです」「この方針でやります」を明確にしたほうがいいと思っています。同時に、社員個人側も「どんな働き方をしたいのか」を明確にしたほうがいい。