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フォーブスジャパン編集部


施設で受けた「経済的、精神的、身体的虐待」


2000年5月に、舩後は時計や宝石を輸入する専門商社でトップセールスとして働いていた頃、ALSと診断された。

どん底ではあったが、逆境を受け入れ、前向きに社会との関わりを持ちながら励む最中だった。2003年6月から2011年11月まで、地方のある療護施設に入居した際に、舩後は「経済的、精神的、身体的虐待」を受けたと明かす。

身体的虐待は殴られるなどの直接的な暴力ではなかったが、体質に合わない栄養剤を胃ろうから注入され、1年以上下痢を繰り返し、徐々に体がむくんでいった。何度も「栄養剤を変えてほしい」と要求したが聞いてもらえず、保険請求できる栄養剤を自費で払わされ、「経済的虐待」も受けたという。

精神的虐待については、ネグレクトや一部の職員による暴言があった。

「こんなくだらないもの集めやがって!」

普段は普通に接していた介護士の女性から突然、罵倒されたこともあった。 舩後は、時計や宝石を輸入する商社での仕事をしていたことから、時計のコレクションが趣味だった。あまりの勢いに圧倒され、きっかけは覚えていない。施設を退去する間際で、母も一緒にいたときだった。

「仲間」と「非仲間」。なぜ意識上の「分断」は起こるのか


その女性からは、彼女の意にそぐわないことがあると、舩後は決まって20日間「ネグレクト」をされ続けていたという。彼女は、舩後に対して罵倒した一件を別の介護士たちに自慢して、「仲間」と一緒に笑っていたことを後から知った。

「私に精神的な負担を課すことを目的としていたのでしょう」と舩後は振り返る。そして、自身の経験を踏まえて施設の閉鎖性について、こう指摘する。

「施設は人間関係が固定化した特殊な環境です。どんな社会にも共通する、人を傷つけてはいけない、騙してはいけない、人の物を盗んではいけないといった道徳観は、職員同士では通用するものの、利用者である障害者には適用されないものです。私の場合は、家族をも巻き込まれ、非仲間扱いをされました」

やまゆり園事件の公判があった横浜地裁
やまゆり園事件の公判が行われた横浜地裁=筆者撮影

文=督あかり 

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