東京慈恵会医科大学教授

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新型コロナウイルスの流行で、リモートワークの奨励やイベントの中止など、人に会わないことが重要視されている。一方、そもそもリモートでは対応できない職業についている人も多い。やむを得ない外出や集まりでは、何に気をつければ良いのだろうか。

秘訣は意外にも最新技術ではなく、誰にでもできるローテクな対策にあった。

SARSを世界最速で封じ込めたベトナム


2002−03年に774人が亡くなったSARS。世界で最も早くSARSを制圧したのは、先進技術を備えた病院に頼った国々ではなく、意外にもベトナムだったことを知る人は少ない。この例は、最新の技術や設備がなくても、工夫次第で感染拡大を防げることを示唆している。

SARSは発症してから感染力を発揮する関係上、院内感染するケースが多く、患者の20%以上が医療関係者であった。そのため患者の早期入院・隔離と徹底的な院内感染対策がキーとなっていた。

2003年当時ベトナムでは、陰圧室(空気感染を防ぐための隔離室)を多く備えた病院があるわけではなかった。代わりにSARS患者を1つの病院に集め、病室の窓は中庭に開け放ち、換気を徹底して、院内感染を減らした。

しかし、結果を見るとこれが非常に効果的であった。「徹底的な換気」こそが、ベトナムが世界のどこよりも早くSARSを封じ込めることに成功した理由だったのだ。


2003年、SARS 患者の入院するベトナムの病室(岡部信彦医師提供、浦島充佳編集)

続いたのはシンガポール


シンガポールはベトナムに次ぐ早さでSARS の封じ込めに成功した。どのような対策がとられたのであろうか。

感染の9割が病院や高齢者施設という風通しの悪い閉鎖空間で発生している。しかも二次感染者の多くは医療スタッフ、同じ病棟の患者、見舞いに来た家族や友人などだった。

そこで、最も患者の多かったタン・トック・セン病院は本館とは別の場所に、突貫工事で平屋病棟を造り、伝染病予防センターと命名したのだ。


2012年3月シンガポールのタン・トック・セン病院伝染病予防センターにて撮影(浦島充佳撮影)

SARS終息後、私はシンガポールのタン・トック・セン病院伝染病予防センターを視察する機会があった。

外廊下なので、窓を2方向開けるだけで病室内の空気はたちどころに入れ替わる。また、あとからコンテナを継ぎ足して病室にしていた。なんでもこのコンテナは日本から寄贈されたとのことだった。


2012年3月シンガポールのタン・トック・セン病院伝染病予防センターにて撮影(浦島充佳撮影)

病室は個室で明るく、窓は両側にあり、ナースコールも付いている。また、直接外につながるファンがついていて、ベトナム同様、ローテックではあるが「換気」に注力していたことがわかる。

視察したときは、ホテルのように近代的な本館と比べて、伝染病予防センターの方はずいぶん旧式という印象を拭えなかった。しかし、ここは2019年に330床を備える国の感染症専門病院として生まれ変わった。

文=浦島充佳

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