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 アメリカの石炭産業は瀕死の状態かもしれないが、まだ死んではいない。3月15日、業界の親玉2人が手を組んで、生き残り策を発表した。石炭開発の大手、FELP(Foresight Energy LP)代表のクリス・クライン(57歳)は、14億ドルのキャッシュと引き換えに同社の株を売却する決定を行った。

 買い手となるのは、業界の御意見番として知られる75歳のロバート・マレー。米国最大の石炭企業、マレー・エナジーを保有する彼は、オバマ政権を「気が狂っている」と罵倒し、「環境保護の連中が、業界を破滅させようとしている」といった、率直な物言いでおなじみだ。

 100年ほど前、石炭は米国の発電燃料の半分を担っていたが、今では全体の37パーセントに過ぎない。コンサルタント会社のウッド・マッケンジーは「現在の相場では採掘される石炭の17パーセントが利益を生まない」としている。

 今回の合併により、米国有数の石炭企業が誕生することになる。その埋蔵量は90億トンを超え、17の炭鉱と独自の流通経路を確保する。業界のアナリストは「世界最大規模の、効率的な炭鉱ビジネスが誕生した」と述べている。

 しかし、今回の発表に株式相場の反応は冷淡だった。発表の翌週月曜のFELPの株価の伸びは1.5パーセントに過ぎなかった。

「けれども、合併による将来性を投資家らは買っている」というアナリストもいる。MLPと呼ばれる共同投資事業形態で運営される同社は、出資者らにキャッシュを非課税で分配する。その分配金利は、およそ年9パーセントに及ぶのだ。

 オハイオ州で暮らすマレー一家にとって、今回の合併は彼らの資産をより強固なものにする意味もあった。昨年度の収益が36億ドルと推定される会社の株は、マレー夫妻とその息子らが全て保有している。もっと儲けようと思えば、新規にIPOを考える手もあるかもしれない。しかし、過去5年間の石炭大手の株価は軒並み下落している。ウォール街の食指は動かないと見たほうがいいだろう。

 その一方で、マレーにFELPを売却したクラインは、低迷する石炭業界においてうまく立ちまわった一人と言える。1990年代に、クラインはUSスチールやエクソンなどからイリノイ盆地の炭鉱を買収した。1992年のクリーンエア法の改正以降は誰も石炭を買わなくなった。

 しかし、クラインは、技術革新によって、石炭が復活する日が来ると信じていた。石炭の採掘費用はその後、大幅に下がり、クラインの炭鉱は同業者らを打ち負かした。その結果、2014年にFELPの株式を上場することができたのだ。

 クラインは今回の合併に先立ち、創業期からの支援企業、リバーストーン・ホールディングスの株を推定5億ドルで買い上げた。マレーとの合併で、それ以上の金額がキャッシュで戻ってくるだろう。

 クラインはすでに、そのキャッシュの使い道を考えている。彼はウィスコンシン州の鉄鉱石鉱山開発の同意を得るために、ネイティブ・アメリカンと争っている。昨年は、カナダのグレンコアから、ノバスコシア州にある炭鉱を買収した。また、先月はカナダ西部にあるコールスパー・マインズの炭鉱も獲得した。石炭ビジネスに飽きたら、ウエストパームビーチの豪邸で楽しい隠居生活を過ごせばいいのだ。

文=クリストファー・ヘルマン(Forbes)/ 編集=上田裕資

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