ビジネス

2020.03.16 14:30

木村石鹸、ファンづくりの秘訣 合言葉は「ちょうどいい」



木村石鹸工業・代表取締役社長 木村祥一郎氏

そんな木村石鹸が取り扱う製品は、工場や銭湯で使う洗浄剤などの業務用と、一般家庭向け用品に分けられる。後者のなかでも、特に生協(生活協同組合)向けOEMの割合が大きい。木村氏が家業に復帰する前には全社売上の70%を占めるまでとなり、同社の石けん事業を長く支えてきた。

だが、2000年代後半に入ると、原料費の高騰が続く一方で、デフレによって製品価格は上がらず、OEM生産が経営を圧迫するようになる。利益が年々縮小し、2013年には売上7億円に対し、「営業利益なし」にまで追い込まれていたという。

木村氏「従来のように『言われたものを、ただきちんとつくる』OEMだけでは、もはや事業が立ち行かない。そこで、自社でもブランドを立ち上げてきちんと利益を出すことと、自社ブランドの認知をきっかけに他のOEMも増やしていくことを考えました。

家業を継いだときから、石けんそのものには、まだまだ可能性があると思ってたんです。いろんな種類がある“意外性”もそうだし、モノが持つイメージも決して悪くない。

現代に合わせてアレンジを加え、人々にとっての石けんへの『見え方を変える』ことができれば、もっとおもしろくできるんじゃないかな、とは感じていました」

自社ブランド開発でにじみ出た“ちょうどよさ”


『SOMALI』は、木村石鹸が発売した最初のオリジナルブランドだ。100%植物由来の自社製石けんをベースに作られたボディケア・ハウスケアのシリーズである。


洗濯用、バスやトイレ、キッチンなどの掃除用、ボディ用など、さまざまなラインナップを揃えている『SOMALI』

SOMALIを開発するきっかけとなったのは、木村氏自身が掃除などの家事を「やりたくないな」と思っていたこと。その理由を考えたとき、市販される洗剤用品などの多くが、日用品なのに「実は暮らしに溶け込んでいない」と気づいたという。

木村氏「SNSやブログの投稿を見ていると、インテリアにこだわる人は、透明なボトルに詰め替えたり、海外の製品を使ったりしていたんです。つまり、“店頭では目立つ”デザインであるほど、“生活空間には馴染まない”。掃除用品って、みなさん扉の奥底とかに隠すじゃないですか。でも、それだと本当に汚れきってからじゃないと、掃除しなくなるんですよ。

もっと傍に飾っておくだけで気分が上がり、使うことで楽しくなるものがあれば、家事をより身近に、前向きなものにできる。多くの人にとって『汚くてやりたくない』ものになっている掃除や洗濯の位置づけを、変えられるかもと考えたんです」
次ページ > お客さまからの「ちょうどいい」という言葉

執筆/佐々木将史 編集/庄司智昭 撮影/其田有輝也

ForbesBrandVoice

人気記事