介助者の監督が、障害者の自立生活描く『インディペンデントリビング』で映し出したもの

障害者の自立生活センターを舞台にした映画『インディペンデントリビング』(C)ぶんぶんフィルムズ 

障害当事者が介助者から手助けを受けながらも、自らの意思で一人で生活ができるようになる過程を描いた『インディペンデントリビング』が、3月14日から東京・ユーロスペースほか全国順次公開される。初の映画製作という田中悠輝監督が手がけた。

田中監督は1991年東京都生まれ。大学卒業後、2013年から福岡県北九州市のNPO法人で2年間野宿者支援の仕事に従事。東京に戻ってからも介助ヘルパーやNPOバンク「未来バンク」の理事を務めるなど幅広く活動している。

2016年6月から、映像作家・鎌仲ひとみが率いる「ぶんぶんフィルムズ」のスタッフとなり、障害当事者から「自分たちの姿をとって欲しい」と声をかけられたことをきっかけに、介助者として現場で働きながら、3年にわたってドキュメンタリー映画の撮影を続けた。

映画では、日々の生活を追っているからこそ見える障害当事者の生きる力や、健常者である介助者も変化していく道のりにもスポットライトが当てられており、人々が一緒に「生きづらさ」から「自分らしさ」を取り戻すまでを映し出している。

インディペンデントリビングの田中監督
試写会で挨拶する田中悠輝監督

笑いあり、涙ありの大阪が舞台


物語は大阪にある自立生活センターが舞台。自立生活センターは、障害当事者によって運営され、重度の障害があっても地域で自立して生活できるように支援を行う場だ。

ここでいう「自立」とは、決まったスケジュールで生活する施設や全面的に支援してくれる家族から離れて、当事者自身の「したい」という意思をもとに手助けをしてもらい、生活の主体者となるということである。

映画冒頭のシーンで、夜の繁華街を車いすで家まで帰る1人の男性が映し出される。家の前で介助者と待ち合わせ、部屋に入るとくわえたたばこに、ライトで火をつけてもらう。冷凍庫からナポリタンを出してもらい、温めて食べさせてほしいと指示を出す。加えてお茶も飲みたいと言う。着替えは顔にかからないような方法をリクエストし、枕の位置も細かく調整してもらう。

そんな自立生活をするこの男性は、交通事故で17歳の時に障害者となった「フチケン」こと渕上賢治。かつては寝たきり生活だったが、15年間介護をしてくれていた母親の死を機に、自立という道があることを知った。
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文=猪俣由香

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