床、壁、天井、テーブルも地球に還る「土」。表参道でサステナブルな美食体験「GYRE.FOOD」

「GYRE.FOOD」総合ディレクターの平尾香世子さん(右)と、全体コンセプターの野村友里さん(左)。イベントスペースの階段型座席にて


新しい文化は、リセットされた“更地”から始まる

今回平尾さんから全体のディレクションを依頼された野村友里さんも「普段は大規模な商業施設に関わることを避ける」タイプの一人だ。「GYREは何かを始めるとき、周囲が『ジャッジ』でなく『応援』したくなる珍しい施設」と評価するが、彼女が「GYRE.FOOD」に関わる想いとは? 野村友里 GYRE FOOD
食にまつわる様々な活動を行う「eatrip」を主宰する料理人・野村友里さん。原宿の路地裏に構える一軒家レストラン「restaurant eatrip」などを運営。雑誌での連載や著書も多数

「私の想いを正直に話すと『今、みんなが本当に欲しいものは何?』をお客さんと一緒に考える場所をつくりたかった。環境やライフスタイルの急な変化が起こっている中で、人々の価値観も変わっていることは確か。私は現代の生きづらさの一因に、自分では作れないスマホや移動手段に頼らなければならない恐怖感があると考えていて、今回この“更地”で、一から私たちに必要なものを確かめたかったんです。たとえば先日、ここに陶芸家の方がいらっしゃって、一緒に『縄文時代ごっこ』をしたのですが、庭園で焚き火をしていたらお皿や器ができました。作物も育てているから、美味しいごはんも食べられる。土からレンガをつくって家も建てれば、ここでミニマムな暮らしができるなと小さな自信と喜びを覚えました。もしかしたら、この感覚を可視化して訪れる方々に共有していけば、現代の生きづらさが解消される未来に繋がるかもしれませんよね」

二階堂明弘 GYRE FOOD
陶芸家・二階堂明弘さんの作品と、野村さんが手掛けた土の食器たち

まだオープンから2カ月経ったばかりだが、すでに多くの文化人やタレントがリピーターとなるなど、影響力を持つ人々、また時代に対するアンテナを張る生活者たちの新たな居場所となっている。これまでの来訪者の様子を見た手応えとともに、野村さんは今後の展望を教えてくれた。

「GYREは1〜3階まで個性的なハイブランドやコンセプトの強いショップばかりが入っていることもあり、GYRE.FOODに訪れる方々も、一見すると特徴がバラバラ。でも、どこかで共通するものもあって。たとえば、ここって地面が土だし開放感もあるから、小さい子供が走り回ったりするんです。けど、ランチをしている人、打ち合わせをしている人、読書をしている人、誰一人嫌な顔をすることなく『元気だね!』と微笑みかけるような対応をする。良い未来を願うGYRE.FOODという場所が、ある種の連帯感やコミュニティを築き始めていると感じる瞬間です。今後もこういった方々に愛されながら、ファンのみなさんと一緒に渦をつくっていけたら嬉しいですね。歴史を振り返っても、新しい文化は、リセットされた更地から始まるものですから」

サステナブルな未来に向けた新たな「循環」は始まったばかりだ。

【店舗情報】
メゾン élan /エラン 18:00-21:00 (LO) 毎週水曜定休
オールデイ・ダイニング EUREKA/ユーリカ 11:00-21:00 (LO) 不定休
バー fünklein /フュンクライン 11:00-23:30 (LO) 不定休
グロッサリー&エクスペリエンスショップ eatrip soil/イートリップ ソイル 11:00-20:00 毎週月曜定休

文=黄 孟志、写真=巻嶋 翔

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