床、壁、天井、テーブルも地球に還る「土」。表参道でサステナブルな美食体験「GYRE.FOOD」

「GYRE.FOOD」総合ディレクターの平尾香世子さん(右)と、全体コンセプターの野村友里さん(左)。イベントスペースの階段型座席にて


施設も生き物。時間をかけて熟成される

表参道沿いという立地。1000平方メートルという面積。この場所で、これほど前例のない挑戦に踏み切ったGYREの総合ディレクター・平尾香世子さんは、生活者の消費スタンスについてこう語る。

GYRE FOOD
「GYRE」完成当時から施設全体のPRを担当するインターナショナルコミュニケーションエージェンシー「HiRAO INC」の平尾香世子さん。ファッションを軸に、アート、インテリア、車など多岐にわたるジャンルのライフスタイルを提案する

「GYREができた2007年当時から比べて、この街に訪れる方々の消費に対するスタンスは大きく変わっています。日本では3.11や台風、世界でもアマゾンやオーストラリアの火災などがあり、世の中全体としてサステナブルであることに関する意識が高まっていくのは必然な状況でしたが、ファッション業界は特にその問題意識から大きな変化をしました。ファッションと密接な関係を持つこの街の生活者も、いち早く、より強くその消費意識を持っていたかもしれません」

そう分析しながらも、「マーケットの後追い」でなく「ライフスタイルの提案」こそが、彼女の信条だと話す。

GYRE
施設外観。「GYRE」は英語で「渦」を意味し、オープン当時から新しいエネルギーを呼び込んできた

「GYREはマーケティングやトレンドに左右されて社会性を持った取り組みをしているわけではありません。10年以上前のオープン当時から『SHOP&THINK』と言い続けて、1日1日やってきた先に『GYRE.FOOD』もあります。だからこそ、生活者はもちろん、関わる方々からの信頼を得られていて、普段は大規模な商業施設に関わることを避けるようなブランドさんやプロフェッショナルな方々にも協力していただけている。それは他にない大きな価値になっていると感じています。施設も生き物で、時間をかけて熟成されていくものなんです」

実はGYREが建つ以前、この敷地はそれまでの歴史から「何をやっても成功しない場所」と言われていた。しかし、GYREは誕生以来10年以上の間、右肩上がりの成長をし続けているという。
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文=黄 孟志、写真=巻嶋 翔

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