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2020.03.13

面倒から解放。「AI文字起こし」が800社以上で利用されるワケ

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会議の議事録や取材原稿などを作成する際、まず最初に踏むステップが“文字起こし”だ。きっと多くの人が、ICレコーダーで録音した音声データを聞きながら、タイピングし続けた経験があることだろう。筆者も仕事柄、取材原稿を執筆するにあたって音声データの文字起こしを行うが、1時間の音声データの文字起こしに4〜5時間かかっている。

そんな文字起こしの作業を効率化してくれるサービスがある。エピックベースが手がける、音声自動文字起こしサービス「Smart書記」だ。同サービスは、マイクから収音した音声をGoogle Speech-to-Textによる音声認識でテキスト化してくれる、というもの。またテキスト化されたものは即時編集が可能となっており、ユーザーはゼロから文字起こしをする手間がかからずに済む。

同社は3月12日、メディアドゥからカーブアウトする形で独立するとともに、メディアドゥホールディングス、Coral Capitalおよび個人投資家の三木寛文、SmartHR代表取締役の宮田昇始、取締役副社長の内藤研介から総額8500万円の資金調達を実施した、と発表した。



今回の発表に関し、エピックベース代表取締役社長の松田崇義はつぎのように狙いを語った。

「経営の独立性を高め、事業に関する意思決定の迅速化とさらなる経営リソース投下を推進するため、エピックベースとして独立しました。今後は、メディアドゥとも協力関係を築きながら、独立企業としてサービスの利便性を向上させるとともに、より広く皆さまに利用いただけるようにしていきます」

調達した資金は主にプロダクト開発やサポート体制を強化するための人材採用に充てる予定だという。Smart書記をアップデートをしていきながら、取得した音声データをビジネスの現場でもっと有効活用できるような基盤を整えていくとのこと。

累計で800社以上が活用、文字起こしの手間を解決




Smart書記は、電子書籍の流通事業などを手がけるメディアドゥが、2017年10月から徳島県と6カ月かけて実証実験を実施した生まれたサービス。2018年6月に正式にサービスをローンチし、トライアル利用など含め、累計で800社以上が利用しているという。費用は月額10万円の定額制で、利用時間が200時間を超える場合は1時間500円の超過料金が発生する仕組みとなっている。

Amazon TranscribeやOtter.aiなどの外資サービスを筆頭に、国内でもいくつか文字起こしサービスが登場しているが、Smart書記は主に「収録・文字起こし」「編集」「出力」という3つの機能を通じて、文字起こしの作業をサポートしてくれる。

「文字起こしの領域に関しては、なかなかソリューションが提供できていませんでした。今もICレコーダーを置き、音声データを聞きながら文字起こしするのが一般的。そうした文字起こしの煩わしさを、テクノロジーの力を使って解決するためにSmart書記が開発されました。主には文字起こしにかかる業務工数を減らすことがサービスの目的です」

具体的な利用イメージはこうだ。ユーザーはICレコーダーで音声を録音する代わりに、Smart書記を使って音声を入力すればいい。会議の場合は参加者が自分のPCにピンマイクを差して収録したり、取材であればSmart書記のiOSアプリを開いて会話を進めていったりするだけで、リアルタイムに文字起こしが行われる。

複数人での会話内容をテキスト化したい場合は、それぞれの参加者がマイクをつけた状態で音声を収録すれば発言者の名前が自動で入力され、誰がどの発言をしたかも分かる。また約100の言語の会話をクラウドが自動翻訳するため、特別な操作をすることなく自分の言語で話すだけで異なる言語の相手に翻訳した内容が表示される。
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文=新國翔大

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