たとえば、2025年の日本は、人口の3分の1が高齢者、かつその5分の1が認知症を患うという予測を、厚生労働省が発表しています。単純計算で日本に暮らす人の15人に1人は認知症となります。またそれに限らず高齢化によって身体が衰えた高齢者はもっと存在するでしょうし、さらにいえば生活習慣病を患う中高年も少なくありません。
一方で、現実の介護産業を見てみると、担い手不足の深刻化で現場の疲弊感は大きく、需給バランスが崩壊しかかっています。
ならば、最も負荷が高い介護現場である「家庭」のインテリジェント化、つまりスマートハウスが、5Gのユースケースとして社会的に期待されるはずです。自宅内及び周辺の生活空間をセンサーで把握できれば、徘徊を警戒して要介護者を家のなかに閉じ込めるのではなく、街中を安全かつ自由に歩きまわらせることができます。
だとすると、それは、もはや「徘徊」ではなく「散歩」であって、ならば街中にセンサーを設置するのと同時に、各々のスマートハウスと街中のセンサーが「会話」して、要介護者の安全や安心を守ればいい……おそらくこれが日本で期待される「スマートシティ」の姿になるでしょう。
ただし、そうした社会が達成されるためには、ユーザの理解や共感が欠かせないのは、当然のことです。ここまでのユースケースは、個人のプライバシーに踏み込むものがほとんどであり、単なる法令遵守といった場当たり的かつ言い訳のような対応では、もはや許されません。
また、人間の行動に踏み込む以上、人間を動かすための情報には高い信頼性(トラスト)が不可欠です。特に5Gはサイバーとフィジカルを直接結びつける結節点となる以上、その正確性や厳密性はより高い水準が求められます。
さらに、そもそも何のためにそのデータを取得するのか、それは本当に必要なものなのかということが体感的に理解されるような「納得感の醸成」も重要です。もちろん、それは顧客だけでなく、従業員やステークホルダーに対しても、等しく理解され、納得されることも必要です。
このように、考えて取り組まなければならないことは、山ほどあります。それでも私は、5G時代の到来に、ワクワクしています。この連載コラムでは、そんな話を、次回からもご紹介できればと思っています。
クロサカタツヤ
スマホからセンサーに主役交代。4Gとは「別モノ」の日常がやってくる #読む5G
特集:読む5G
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