コロナ拡大で考える、非常時に有効な「リーダーの対応」

3月2日の東京都内の様子(Getty Images)


今回のお手本、シンガポール


シンガポールでは、性弱説を前提に仕組みが整えられていると僕は考えています。例えば今回の場合、警戒レベルが低い段階では、中国本土の渡航歴がある人の休暇取得を義務とし、雇用者への支援金支給の措置が取られました。

しかし、その二日後に警戒レベルを上げる必要が出てくると、違反した企業への外国人労働者のビザ没収、強制送還などを取り決めています。つまり、警戒レベルに応じて支援金支給から罰則に切り替えることで、弱い性質の人が「働いてもいいや、自宅待機しなくてもいいや」と誤った判断をしなくて済むように、インセンティブを明確にすることで守っているのです。

もちろん、シンガポールは強権国としても知られ、トップダウン型の組織管理が徹底されている背景はありますが、こうしたパニックへの対処が早いのは、「弱い性質の人たちをいかに守り、まとめるための仕組みを考えるか」という性弱説に基づいた判断が行われるからではないかと、僕は考えています。

国の仕組みを整える機関は政府です。ただ、パニックが起きたときは、政府が動かないなら地方行政が、地方行政が動かないのなら会社、会社が動かないなら家族など、それぞれの組織のリーダーが指示を出す必要があります。

このとき、性善説でも性悪説でもなく、「弱い性質の人たちをいかに守り、まとめるための仕組みを考えるか」「判断力が低下するであろう人たちに、いかに早い段階で冷静な指示を出すか」という「性弱説」を前提に判断をしていく必要があることを、僕たちは念頭において置かなければならないのかもしれません。

連載:ポストAI時代のワークスタイル
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文=尾原和啓

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