現地の織物や革製品のサプライヤーはロイターの取材に、グッチやプラダ、サルヴァトーレ・フェラガモなどの大手からの発注が激減したと述べた。
ケリング傘下のブランドにプロダクトを納入する工場のオーナーは「以前はグッチ向けに一カ月あたり約1000個のバッグを納入していたが、2月には450個に減り、3月分の発注はゼロになった」と述べた。
イタリアは現在、中国に次いで2番目に新型コロナウイルスの感染者が多い国となっている。イタリア政府は3月8日から全人口の4分の1にあたる、約1600万人が暮らす北部の広い地域で人の移動を制限し、封鎖する措置に踏み切った。これにより、金融とファッションの重要拠点であるミラノも大きな打撃を受けた。
イタリアは世界の高級品市場において5番目の規模を誇り、売上の大半を皮革製品が占めている。Bain & Companyのデータによると、2018年の高級品市場の売上に占める中国人消費者の割合は3分の1に達していた。
ただし、高級ブランドのサプライチェーンは在庫を多く抱える傾向があり、イタリアの製造拠点の寸断が、ただちに業界全体に巨大なダメージを与えることにはならないという見方もある。
調査企業GlobalDataのアナリスト、Honor Strachanは「イタリアの業者からの素材の供給に頼るブランドの多くが、代わりとなる仕入先を探している。しかし、ブランドの基準を満たす素材を安定的に確保することは難しく、熟練した職人技に頼ってきた大手は、多大な困難に直面することになる」と述べた。
「イタリアを訪れる観光客へのアピール度が高い現地ブランドは、特に大きな打撃を被ることになる。プラダやアルマーニ、ヴァレンティノなどがその筆頭だ。さらに、グッチやボッテガ・ヴェネタ、ポメラートを傘下に持つケリングも2020年上半期は厳しい状況に直面する。フェンディを傘下に持つLVMHも苦戦しそうだ」とStrachanは続けた。
一方でユーロモニターの高級品部門のアナリスト、Fflur Robertsは「感染の拡大が3月の末で封じ込められれば、旅行や買い物需要は急速に回復し、高級ブランドの売上も持ち直す」と述べた。