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(左より)岡元 利奈子 Great Place to Work® Institute Japan 代表、遠田 聖子 アメリカン・エキスプレス・インターナショナル, Inc. コンプライアンス部門 日本担当 副社長

ここ数年、グローバルのビジネスシーンで熱い注目を集めている“IKIGAI(生きがい)”という言葉。KAWAII(かわいい)、UMAMI(旨味)などと同様に、日本独特の概念として世界に浸透している。そしてその延長線上にあるのが“働きがい”という価値観だ。


とかく精神論として語られがちだが、それを具体的に指標化し、評価する試みが、1998年より続くGreat Place to Work® Institute Japan(以下、GPTWジャパン)による『「働きがいのある会社」ランキング』だ。日本由来の精神がグローバルに普及し、再び日本のビジネスシーンに舞い戻り、示唆を与える。この構図に我々は何を見るべきなのだろうか。


働きやすさと働きがい、その似て異なるもの

「私たちは、『働きがいとは働きやすさとやりがいの両者が備わったもの』と、定義しています。政府が推進する『働き方改革』は、あくまでも働きやすさの施策にとどまっています。働き方を真に改革するために必要なもうひとつのファクター、やりがいについては、まだまだ未着手の段階です」

Great Place to Work® Instituteは、約60カ国で7,000社超の企業が参加し、500万人以上の参加企業の従業員から回答を得ている世界最大級の意識調査機関である。同機関が毎年発表する「働きがいのある会社」ランキングに名を連ねることは、近年のグローバル一流企業の条件とさえ言われている。

日本法人であるGPTWジャパンは、国際女性デー目前の3月6日に、今年で4回目となる『2020年版「働きがいのある会社」女性ランキング』を発表し、合わせて記者発表講演「女性の働きがいとは? ベストカンパニーに学ぶ 《女性が辞めない2つの環境整備》」を行った。

冒頭の言葉は、GPTWジャパン代表 岡元利奈子(以下、岡元)が壇上から放ったメッセージである。岡元は女性活躍を推進しつつも、2018年時点での女性管理職比率が主要7カ国中最下位をマークした日本にとって、この2017年からスタートした女性ランキングこそが大きなヒントになると指摘する。

「働きやすさとは、休暇取得の容易さ、勤務時間短縮などハード的な施策で主に対応できるものであり、不満足に関わる『衛生要因』。一方やりがいは、やる気やモチベーションなどソフト的な問題であり、満足に関わる『動機付け要因』となります。

これは主語を女性に置き換えると、よりわかりやすくなるでしょう。女性の社会進出に重要な育児休暇のとりやすさ、時短勤務の実現はあくまで衛生要因。仕事に対する誇り、期待、正当な評価などが動機付け要因。この2つの要因がそろわなければ、企業の成長は望めない、そうした時代に差し掛かっているのです。

だから、働きやすさがある前提に、やりがいがあってはじめて、『働き方改革』は成し遂げられるということに、気づいてほしいのです」(岡元)


『2020年版「働きがいのある会社」女性ランキング』を発表する岡元

精神論ではない働きがい。指標化は可能だ

GPTWの評価方法は、従業員側と企業側双方への全世界共通のアンケートをもとに数値化される。そこに用意される設問は、ユニークだ。

・この会社では、従業員の性別に関係なく正当に扱われている
・この会社には、「家族」「仲間」といった雰囲気がある
・私たちが会社全体で成し遂げている仕事を誇りに思う

それらの設問が、イノベーションを導く「For All精神(一人ひとりの能力が最大限に生かされている)」や、マネジメントと従業員の間に「信頼」があるかなど、企業の成長に欠かせない指標として算出される。

そして女性ランキングは、それらによって選出された「働きがいのある会社」のなかから、「女性の従業員アンケートの結果」「女性社員が活躍するための企業施策・プログラム」「女性従業員比率などの基本会社データ」の3つの基準のスコアが特に優れた企業を選出したものだ。

「今回わかったのは、前回に比べて性別に関わらずスコアが全体的に低下しているということです。なかでも女性においてその傾向が顕著でした。主に『仕事を楽しみにすること』『一体感』『採用の納得感』が低下していました。

ダイバーシティ促進や女性活躍推進の施策が盛んに行われているにも関わらず、とりわけ女性の働きがいは、上がるどころか下がっているというのは憂慮すべきことです。自社の取り組みが本当に女性の活躍や働きがいにつながっているのか、今一度点検する必要があるでしょう」(岡元)

男女共同参画、ダイバーシティがどんなに叫ばれても、なかなか進んでいない現状。そのブレイクスルーになるのがこうした現状を測る指標やランキングなのだと、岡元は言う。

「女性ランキングが示すのは、ひとつのベストプラクティスです。女性が活躍するにはどうすればよいのか、そしてそのことでいったい個人や企業が何を得られるのか、ここに選出された企業がより具体的に示してくれるはずです。各企業が自社でどのような施策をとればよいのかといったことについても、大きなヒントになるでしょう」(岡元)

周囲からの「後押し」が女性活躍推進の鍵となる

今年の『2020年版「働きがいのある会社」女性ランキング』で見事大規模部門の1位に輝いたのは、アメリカン・エキスプレス(以下、アメックス)だ。記者発表講演のゲストとして登壇した同社コンプライアンス部門日本担当副社長の遠田聖子(以下、遠田)は、ランクインの効果は社内にとどまらないと言う。

「受賞は、社員の大きな自信、プライドにつながったと思います。日々改善に取り組んでいる証でもあり、社員の満足度も年々高まっていることで、生産性向上にも確実につながっています。また、この受賞は外部への効果も非常に大きいものです。クレジットカードの会社という認識だけでなく、「働きがいのある会社」という切り口から会社自体に興味を持っていただけること、“そのような企業なら”という評価から優秀な人材が集まってくること、当社のファンが増えること、どれも非常に大きな恩恵です」(遠田)

そんな同社の女性社員比率は59%、女性管理職比率は日本全体の平均を大きく上回る33%で、過去10年間、30%を割ったことはないという。いかにして女性の働きがいを高め、ランキング1位になることができたのか。

「アメックスは世界150ヶ国以上で展開しており、日々の業務の中でも、様々な国や文化を持った社員と一緒に働いている環境なので、ダイバーシティは比較的身近なものとして存在します。当社が特に大事にしているのはインクルージョンです。これは多様な考え方を尊重し、社員一人ひとりが自分自身でいられる環境を作ることですが、アメックスでは制度を整えるだけでなく、それを十分に運用するための企業文化も重視しています。

当社の会長 兼 CEOであるスティーブ・スクエリも、『社員ひとりひとりの個性を尊重し、個々の貢献を大切にし、一人ひとりが成功する機会を与えること、その全員がチームとなって勝利すること。その基本ができていない会社は長期的に見て成功しないだろう』と言っています。当社のビジョンは『日々、世界最高の顧客体験を提供する』というものですが、そのために、まずはお客様にサービスを提供する社員を後押し(バッキング)することが大事だという全社共通の理解があります。

女性のエンパワーメントに関していうと、女性社員にも自分にもっと自信を持って、キャリアを伸ばしてしていけるような環境をつくっていきたいと思っており、そのために社員同士のネットワーキング・イベントや、当社の女性シニア・リーダーと気軽に意見交換する場を設けたりしています。この『バッキング』の姿勢は、性別や立場によらずすべての社員に向けたものですが、それが女性の『働きがい』を高めることにも繋がっているのだと思います」(遠田)


記者発表講演を行う遠田

女性活躍社会が日本経済活性化の光明だとして政策は打たれている。しかし働きやすさの施策だけでは企業は成長しない。そこで重要なキーワードとなるのが“働きがい”なのだ。

『2020年版「働きがいのある会社」女性ランキング』は企業経営者が抱える問題の壁を破壊する大きなヒントになるはずだ。企業成長に不可欠な女性のエンパワーメントにつながるベンチマーク企業が、ここにはずらりと揃っているのだから。


遠田 聖子 アメリカン・エキスプレス・インターナショナル, Inc. コンプライアンス部門 日本担当 副社長



とおだ・きよこ◎ニューヨーク州立大学バッファロー校卒業後、米国大手会計事務所にて勤務。2008 年にアメリカン・エキスプレス・インターナショナル, Inc. 日本支社にコントローラーとして入社。その後、NY本社勤務を経て、2017 年に社内の女性ネットワークである WIN(Women’s Interest Network)および、LGBTQ+社員のネットワークである PRIDE のエグゼクティブ・スポンサー に着任。様々な社内イベントや啓発活動を通じて、多様性を尊重する職場環境づくりに尽力している。

岡元 利奈子 Great Place to Work® Institute Japan 代表


おかもと・りなこ◎大学卒業後、人事測定研究所(現リクルートマネジメントソリューションズ)入社。営業職を経験後、人 事コンサルタントとして、人事制度設計・多面評価制度・採用選考設計・従業員意識調査などを行う。その後、海外現地法人に出向し、コンサルティングビジネスの立ち上げ支援、新サーベイ開発のプロジェクトリーダーなどを経験し、2014 年より現職。


2020年版「働きがいのある会社」女性ランキング

大規模部門(1000人以上)
1位 アメリカン・エキスプレス / クレジット・カード等の金融事業、旅行関連事業
2位 ディスコ / 精密加工装置の製造・販売
3位 レバレジーズグループ / 人材関連、M&Aコンサルティング、自社メディア事業など
4位 パーソルキャリア / 求人メディアの運営、人材紹介サービス、 新卒採用支援など
5位 エイチーム / エンタメ、ライフ、ECを展開するIT企業

中規模部門(100-999人)
1位 サイボウズ / グループウェアの開発、販売、運用
2位 コンカー / 経費精算、出張管理、請求書管理におけるクラウドサービス事業
3位 グロービス / 人材育成・組織開発、出版・発信、ベンチャー企業への投資
4位 FCE Holdings / 企業研修事業、RPA事業、教育事業、出版事業、ストア事業
5位 武蔵コーポレーション / 収益用不動産を中心とした資産運用コンサルティング

小規模部門(25-99人)
1位 アンジェラックス / エステティックサロン・スパ運営
2位 現場サポート / 建設業向けクラウドサービスの企画・開発・販売・サポート
3位 難病の子どもとその家族へ夢を / 難病を患う子どもと家族の応援を通した全ての人のQOH向上事業
4位 あつまる / 集客プラットフォーム事業
5位 ビザスク / 知見シェアプラットフォーム「ビザスク」の運営など



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Promoted by Great Place to Work® Institute Japan / text by Ryoichi Shimizu / photographs by Shuji Goto/ edit by Akio Takashiro

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