ビジネス

2020.03.13

朝陽には希望を、夕陽には感謝を


僕は「まずは夕陽の日をつくったらどうだろうか」と提案した。浜崎さんはそれから1年間奔走し、天草、河浦、牛深地域の観光関係者らでつくる天草西海岸サンセット協議会とともに、2019年、提案日である11月18日を「天草夕陽の日」に制定したのである! その当日、僕は社員数人とともに天草を訪れ、「天草ブルーガーデン」という名所で夕陽を見た。光の道が海面に映し出され、実にきれいだった。そしてあらためて思った。朝陽と夕陽は、写真に撮ると見分けがつかないけれど、実景を見るときの気持ちはまったく違うと。

朝陽は、「拝む」という言葉が思い浮かぶように、これから始まる時間がよきものになりますようにと祈りたい気持ちになる。いわば「希望」だ。一方、夕陽は、これまでの時間を振り返り、「今日も一日ありがとうございました」と頭を垂れる心持ちになる。いわば「感謝」である。

夕陽そのものだけで人に足を運ばせるのは難しい。しかし、「“ありがとう”を言うために天草に来てください」というメッセージを込めたらどうだろうか。自らを俯瞰で見つめ、感謝の気持ちを育み、明日から心新たに生きていこうと決心する──そんな夕陽の影響力をきちんと言葉にして届ければ、天草の夕陽はとても価値のあるものになるかもしれないと思う。

年賀状を送る意義


ここまで太陽について綴ってきた僕だが、なぜか初日の出は意識して見たことがない。僕の“元旦”は、自宅での清めの風呂と、年賀状で始まる。

弊社では毎秋、「年賀状会議」を行い、社員一同でアイデアを考える。2018年は「うっかりさん専用年賀状」というコンセプトだった。年賀状を出し忘れたり意外な人からもらったりした場合に「年明けに送る専用の年賀状」を作成し、封書に入れて送ったのだ(「あけましたからおめでとうございます」という僕の代筆(印刷)つきで)。2019年は、「平成最後の新春福引大会」。1月7日以降に弊社オフィスに年賀状持参で来ていただいた方に福引を行い、ハズレなしのプレゼントを贈った(ちなみに特賞は「誕生日サプライズ企画します券」)。

年賀状は間に合わないかもしれないが、僕は直筆の手紙や絵はがきを大切な誰かに出すことをいま強烈にオススメしている。スピードの速さ、手間のかからなさが良しとされる世の中で、いまだ手書きの手紙は人の心を射止めてやまない(ですよね?)。日本郵便では20年3月まで月に1回、「心に残る風景に出会った瞬間に、絵はがきを書く・差し出すための環境を提供する」をコンセプトにした移動型郵便局「ポストカー」を運行している。これまでに新潟の長岡まつり大花火大会、富山のおわら風の盆、神戸ルミナリエなどを回り、1月は長崎に登場予定だ。

考えてみれば、年賀状も昨年の感謝と今年の希望を伝えるために出すわけで、やはりなくなってほしくない文化だと思う。

イラストレーション=サイトウユウスケ

この記事は 「Forbes JAPAN 2月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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