3月に入ってから感染者が確認されたハワイだが、実は現地の人の間では「感染者はきっとハワイにもういるだろう」という見方が広がっていた。
2020年1月にハワイを訪れた人は86万2000人。このうちアメリカ本土から来た人がもっとも多く、およそ64%。次いで日本が15%、カナダが7%となっている。日本の割合よりは低いものの、韓国や中国からの旅行客も多く、特に春節を迎える時期はハワイの主要なショッピングセンターでもプロモーションが実施され、中国人観光客の姿もよく見かけた。それだけハワイではアジア各国からの旅行者が多く、中国や韓国、日本で拡大する新型コロナウイルスの影響は避けられないと見る考えがあったのだ。
ハワイで感染者がゼロだったある事情
ではなぜ、2月までハワイで感染者が一人も出なかったのか。その答えは、アメリカの新型コロナウイルスの検査体制に大いに関わる。まだ、ウイルス感染の有無を調べることができる検査キットが十分に準備されていない現状がある。
アメリカ疾病対策センター(CDC)は2月上旬、ハワイを含むアメリカ各地へ新型コロナウイルスの検査キットを送付したと報じられた。だがCDCは誤ってハワイではない別の州に検査キットを送っており、ようやくハワイに届いたときにはキットが破損して使い物にならなかった。
2月下旬の時点では、もしハワイで検査を行っても検体をジョージア州アトランタにあるCDC本部まで送り、結果が出るまでは1週間ほどかかるという状況。ハワイ州では、日本から検査キットを取り寄せることも検討していると報じられていたのだ。
世界各地で感染が拡大するうち、ようやくハワイでも新型コロナウィルス感染の検査ができるように準備が整ったのは、3月に入ってからだ。ハワイ州保健局は3月の会見で、手術着と手袋、マスクを身に着けた職員が検査のプロセスを説明した。
アメリカでは2月初旬から中国滞在歴のある訪問者の入国を禁止するなど、水際対策はいち早く実施してきたが、これだけ世界で感染者が膨れ上がっている現状を鑑みると、検査体制の整備の遅れは否めない。ちなみに、ようやくウイルス感染の検査ができるようになると、感染の疑いがあった6人の検査を実施されたが、全員陰性だと確認された。