観光地ハワイにも新型コロナの影。なぜ3月に入って感染者が確認されたのか

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ハワイでもトイレットペーパーが品薄


現在ハワイの検査体制では、1週間に最大で250件の検査が確認できるという。ようやく検査が可能となったことで、これからハワイでも感染者の数が増えていく可能性が高い。では、ハワイにはどんな影響が出てくるのだろうか。

ハワイの一般市民にとって、もっとも身近で実感できる変化が、ここ数週間の間に起きている。それがトイレットペーパーや飲料水などの不足だ。日本はもとより世界中で発生しているという“コロナパニック” がハワイでも起きたきっかけは、2月下旬にハワイ保健局が「感染拡大に備えて、14日分の食料や医薬品などを用意するように」と発表したことだった。

缶詰やパスタといった長期保存できる食品も品薄状態の店が多く、店内の一定の棚ががらんと空になった店が日に日に増えていっているようだ。ハワイでは多くの物資を島外から仕入れているため、一次的な混乱ではなく、この状態が長期化すると住民の生活にさらに大きな影響を及ぼしかねない。

新型コロナパニック
世界各地でトイレットペーパーなどの買い占めが起きている。写真はオーストラリア (Shutterstock)

またハワイ経済への影響も大きな懸念事項のひとつだ。ハワイは観光業で成り立っている地域であり、入国者の制限を行ったり、「ハワイ=新型コロナウィルスの感染がひどい場所」などというイメージが広がれば、ハワイ全体の経済にとてつもないダメージをもたらすことは必至だ。

現にハワイでも少しずつ大規模イベントへの自粛や中止の動きが広がっている。日本や世界各国から参加者が集まり、毎年3月に実施される「ホノルルフェスティバル」は観客動員数10万人を超えるハワイのビッグイベントのひとつだが、開催数日前に中止が発表された。また3月10日に予定されていた歌手マライア・キャリーのハワイコンサートも延期が発表されている。このようなイベント開催中止による観光業や飲食業の収入減は、ハワイのビジネス界へ大きな影を落としているだろう。

ちなみに、2002年~2003年に発生したSARSによるハワイ経済への影響は、現在の価値で3.5~4億ドルと言われるが、もし新型コロナウイルスの感染が今以上に拡大すれば、SARS以上の打撃を与えかねないと試算するエコノミストもいる。

3月1週目までのハワイ訪問者数は前年比32%減となり、このまま感染が拡大すれば2020年第3四半期にはハワイで6000人も仕事を失う人が出るとも現地では報じられている。

インフルエンザウイルスは気温と湿度が高いと生存しにくいと言われているが、現在拡大している新型コロナウイルスはシンガポールやマレーシアなどの高温多湿な地域でも感染が広がっている。

つまり1年を通して温暖なハワイでも、新型コロナウイルスが広がる可能性が低いとは決して言えないのだ。とはいえ、まだハワイの感染者はまだ2人だ。これまでは検査体制の遅れなどアメリカのずさんな対策が見受けられた面もあるが、ハワイ州政府が講じる今後の対策に期待したい。

文=佐藤まきこ

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