「インスピレーション」を受けやすい人と環境の共通点


インスピレーションがこれからのAI時代において、人間性や創造性を引き出す源泉となることは先述の通りです。となると、これまでの社会システムや個性をつぶし画一的に人を評価・競争させる仕組みそのものが、人類の未来を危ぶませる邪魔者になってしまうということではないでしょうか?

逆に言えば、今その仕組みやシステムをアップデートしさえすれば、人類はこれまでに踏み入れたことのない、個性が発揮される多様性に満ちたクリエイティブな社会を築きあげることができるのではないかと思います。

当然それは、簡単なことではないと思います。企業、学校などあらゆる組織が、これまでとはかなり異なる文化やルールに変わっていかなくてはなりません。

正解は人の数だけある。Inspire Highが目指す世界


インスピレーションを受けやすい環境を構築するために必要な前提があります。それは、ゴール(正解や成功の定義)を1つにしない、ということです。

ゴールを一つにすると、そこへの最短距離は何か、どうしたらそこに向いていない人でもそこに向かわせることができるのかという競争や強制の文化が構築されます。つまりそれは、インスピレーションが起きにくい文化です。

ゴールは人の数だけある。これを絶対的な前提としてスタートすれば、インスパイアリングな環境がつくっていけると思います。そのため、冒頭にご紹介した10代のためのオンラインラーニングコミュニティ「Inspire High」では、必ずしもいい大学に入り、いい企業に入り、世界を変えるビジネスリーダーになることを成功と定義していません。

人それぞれが自分なりの成功を見つけ、他者と比較することなく、社会とのつながりを感じながら生きられる社会。それがInspire Highのビジョンです。

当然、資本主義経済の中で生きる企業が、せーので180度変わり、競争から脱し、多様な価値をそれぞれに発揮しながらも経済活動として継続させていくことは難しいと思います。

しかし、研究結果によれば、インスピレーションを受けやすい人たちが増えれば、目的や目標に対する進捗スピードが上がり、生産性も上がるのです。つまりそれは、翻って資本主義経済にも合理的なアプローチであると考えられます。

当然誰もが、個人の実感としても、いやいややらされている仕事よりも、楽しくてしょうがないことをやっているときの方が、効率も質も高いと考えられると思います。

そうであるなら、個人、組織、地域の幸福(ウェルビーイング)を最大化するためにインスパイアされやすい組織を形成していくことは、社会全体の課題であると考えられるのではないでしょうか。

文=杉浦太一 調査協力=清水イアン 写真=shutterstock、CINRA

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