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地域経済とソーシャルイノベーション

組合員のためにどうしても成功させたい




AgVenture Labは2019年5月に創業。8つのJAグループ全国連が社会課題の解決に向けて連携し、設立された肝煎の事業だ。荻野は、AgVenture Lab の紹介で、映画「フィールド・オブ・ドリームス(1989年アメリカ映画)」の "If you build it, he will come." という台詞を引用する。まさに言葉通り、「それを作れば、志を同じくする仲間が集まる場所」を目指した。

荻野が印象に残るイベントの一つとして、福島の復興と農業の未来を考えるアイデアソンがあげられる 。福島県の関係者だけではなく、農家や起業家、技術者など多種多様の人たちがあつまり、知恵・アイデア・技術を集積し、社会課題の解決に取り組む。既存の解決策の導入のみならず、小さな種の段階にある技術やアイデアを探し、芽吹かせることこそが、いまの農業課題を解決する一つのAg Venture Labの求める姿で、農業イノベーションの未来をみたそうだ。

蟻の門人となるなかれ


荻野の座右の銘は、福沢諭吉の『学問のすゝめ』に書かれている「蟻の門人となるなかれ」という言葉だ。

「働きアリのようにただひたすら働くのではなく、世のため人のために貢献しようと社会のためにやっています」と笑顔で答える荻野。

入社してから約30年間スーツを着続けてきた荻野は、今ではアメリカのスタートアップの経営者のようにAgVenture LabのブランドロゴをつけたパーカーとTシャツで仕事をしている。

「最初ははずかしかったのですが、JAグループのなかでも稼いでる地域もあれば、苦しんでる地域もある。自分が広報宣伝することで、少しでも組合員のためになればと思って、使命を背負う気持ちで毎日同じ服をきています」。

荻野の魂が込められたAgVenture Lab




筆者もよくイベントを開催するが、週に2回イベントを継続的に開催することは並大抵のことではない。しかもAgVenture Labは、国内のみならずフランスのインキュベーション施設とイベントを開催したり、ルワンダ・スタートアップ企業とのピッチイベントなどグローバルな活動が続く。

取材を終えてAgVenture Labとは、いまのJAグループの姿勢をあらわし、荻野の魂を表現した空間だと思った。たんなる箱物ではなく、人と人をつなげ、人を幸せにしていくという「結」の精神が込められている。だからこそ年間で1万人以上が集まるのだろう。

4番バッターだった野球少年は、農業の未来をに貢献するエースの使命を背負って、今日もブランドロゴをつけた服で活動を続けている。殺風景な高層ビルが並ぶ東京大手町の一角から、「苦しくて儲からない」農業から、「楽しくて稼げる」農業の時代がやってくる希望を感じた。

文=齋藤潤一、写真=Waki Hamatsu

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