芋虫は腸内のバクテリアの働きで、ポリエチレンを分解しアルコールの1種であるグリコールを排出している。研究者はバクテリアのみを取り出して、ポリエチレンの分解プロセスを確かめたが、その実験はうまく進まなかったという。
ブランドン大学のChristophe LeMoine教授は「腸内のバクテリアとその宿主の芋虫のシナジーにより、プラスチックの分解が可能になっているようだ」と述べた。LeMoine教授は同僚のBryan Cassone教授と共に、研究の成果をRoyal Society の学術ジャーナルPublishing Bで発表した。
「芋虫と、その体内のバクテリアがどのようにしてプラスチックを分解するかを突き止めれば、プラスチックごみを除去する新たな手段が生み出せるかもしれない」と論文では述べられた。
研究に用いられた芋虫は、ハチミツガ(wax moth)の幼虫だ。ハチミツガは幼虫のうちに栄養を蓄え、成虫に育って以降は一切の餌をとらず数日程度で子孫を残して死んでいく。今回の研究で、芋虫がポリエチレンだけで生育し、成虫になれることが確認できたという。
しかし、Cassone教授らは、今後さらなる研究を進め、芋虫がポリエチレンを消化するメカニズムを解明していく計画だ。
「芋虫は驚くべきスピードでポリエチレンを分解する。体内のバクテリアは、1日か2日程度でプラスチックを消化する」と、Cassone教授は指摘する。「しかし、プラスチックごみの追放のために、生きた芋虫を大量に用いるのは現実的ではない。消化のメカニズムを解明し、新たなツールを生み出すべきだ」と教授は続けた。
ブランドン大学による研究には、カナダ政府の自然科学・工学研究会議(Natural Sciences and Engineering Research Council)の資金が用いられている。さらに、カナダイノベーション基金からの出資も受けている。