撮影場所のショップは、2019年5月にオープンしたばかりの次世代型店舗。店内には3Dのボディスキャナー室があり、来店者はセルフサービスで自分のサイズを計測できる。中央にあるタブレットでは、接客AIが計測データをもとにお勧めのインナーウェアを教えてくれる。カウンセリングルームがあって対面で相談できるが、計測後にデータだけをもらって帰ってもいい。店頭でスタッフに話しかけられることが嫌な人も、これならストレスフリーだ。デジタル化を進めた理由を安原はこう解説する。
「日本女性の7割は間違ったサイズのブラジャーをつけているというデータがあります。本当はお客様も不安で、きちんと測りたいと考えているはず。ところが、計測は買うことが前提という先入観があって、入りづらさを感じているお客様もいらっしゃる。そこでデジタルの力を借りて、気軽に入っていただけるようにしました」
顧客接点の見直しを図る背景にあるのは、百貨店の減少だ。日本百貨店協会の加盟店はピークで300店舗以上あったが、現在は193店(19年10月末現在)に。売り場が縮小するなかで売り上げを伸ばすには、顧客との関係性を一からつくり直す必要がある。店頭での3DボディスキャナーやAIの活用も、その一環だ。
「わが社は海外のウェイトがそれなりに大きいので、『わざわざ縮小していく日本に投資する必要はない』と言う人もいます。でも、守りに入るのは、マーケットを取り尽くした後でいい。現在、数量のシェアは推定10%強。伸ばす余地は十分にある」