学ぶべきこと
南北戦争後の連邦再建時代と、それに続くしばらくの間、つまり、1865年から1900年ごろまでのアメリカ大統領は、その前任者や後任者たちと比べて影響力が小さかった。
その時期の人物で、あなたの知っている名前を思い浮かべてみてほしい。おそらく、メロンやロックフェラー、カーネギーといったビジネス界のリーダーの名前が浮かぶのではないだろうか。南北戦争後、米国人は政府に対する信頼を失ったが、その時期には、ビジネス界のリーダーに、ずっと大きな信頼が寄せられていた。ビジネス界こそが、社会がリーダーシップを求めた場所だったのだ。
昨今では、政府のリーダーシップに関して人々が抱く気持ちは、信頼ではなくなっている。だが、ビジネス界のリーダーたちに対しては、そうではない。ベゾス、バフェット、ゲイツといった名前は、政治のリーダーたちよりもはるかに尊敬されている。
もしかしたら現代のわれわれは、ビジネス界のリーダーシップが、政府よりも重要だった再建時代と似た時代に突入しようとしているのかもしれない。いや、すでに突入したのかもしれない。それは必ずしも良いことではない──問題解決には、しばしば膨大なリソースを必要とするが、それをまかなえるのは政府だけだ。
とはいえブランドや小売業者にとっては、途方もなく大きなチャンスかもしれない。消費者が企業にリーダーシップを期待しているというのが本当なら、そのリーダーシップを消費者に提供できれば、ブランドや小売業者にとっては大きなチャンスになるはずだ。
そうした環境では、持続可能性などの社会的目的に関して消費者が求めている価値をうまく利用できるブランドは、ほかに敵うもののない消費者のロイヤルティを育てることができる。それについては、パタゴニア(Patagonia)、ステラマッカートニー(Stella McCartney)、オールバーズ(Allbirds)といったある種の、しかしほんの一握りのブランドが、どうとらえられているかを見ればわかる。
そうしたブランドでは、持続可能性に関してブランドが伝えている価値や、ブランドの姿勢により、製品の価格はそれほど大きな問題ではなくなっている。消費者にとって意味のあるものを体現しているがゆえに、購入判断において価格が最重要基準ではなくなっているのだ。
そうした方向性こそが、高い粗利益と高い利益率、そして持続可能性という価値を維持したいブランドが目指すべきものだ。
消費者はいま、リーダーシップを求めている。そしてそれを提供することは、現在の環境でビジネスを築く最高の方法になるかもしれない。