ビジネス

2020.03.12

「可能な限りビッグになりたい」世界最大ホテル帝国が成長を続ける秘密

マリオット・インターナショナルCEOのアーン・ソレンソン


ソレンソンは傘下の全ホテルをひとつに結ぼうと、「Marriott Bonvoy(マリオット ボンヴォイ)」と呼ばれるロイヤリティプログラムを導入した。これをもって頻繁に旅をする顧客を、マリオットの30ブランドのホテルへの宿泊に誘い込もうというのである。このプログラムは大人気で、18年はマリオットの予約客室数の約半分をボンヴォイのメンバーが占めた。「支払金額をベースとする特典プログラムは、ポイント使用時の還元率が約6〜7%になる。多くのクレジットカードより割がいいよ」と、ソレンソンは言う。
 
マリオット傘下のホテルに泊まる顧客が(あるいはレンタカーや、リッツカールトンが近々就航させるクルーズ旅行といった、宿泊以外のことにポイントを使用する顧客が)増加するほど、所有するホテルにマリオットの名称を付けたがる不動産開発業者が増えていく。いまや世界中で新たに建てられている客室の約20%はマリオットだ。

「マリオットがマリオット自体を継続的に大きくしていく。ビッグになればなるほど、より良い機会に恵まれるようになるんだ」と、RBCキャピタル・マーケッツのアナリスト、ウェス・ゴラデーは言う。
 
現在の懸念は、エクスペディアやカヤックを介して予約する宿泊客が比較的低い収益しか生まず、ボンヴォイにも貢献しないことだ。これまでのところ、そうした予約サイトの問題は対処できないほどのものではなかった。だがソレンソンは、グーグルやアマゾンが参入してきたときのことを警戒している。

「アマゾンが台頭してきた時、ホテル業は小売業とは別物だと、私は自分を納得させた。一般論として、一夜の滞在を箱に詰めて誰かに送ることなどできないからね」と、ソレンソンは言う。だがいまや、「それだけでは明らかに防備が不十分だ」。彼の戦略は巨大化すること。「可能な限りビッグになりたい」。
 
ワシントンの蒸し暑い夏の朝、ソレンソンは15番通りに立つWホテルの屋上ラウンジから米国の首都を見晴らし、ワシントン記念塔やホワイトハウスを指し示した。見渡す範囲にマリオットのホテルがいくつ数えられるかと聞くと、彼はにやりと笑って、こう言った。「まだ足りない」。


アーン・ソレンソン◎弁護士としてのキャリアを経て、その手腕を買われ1996年にマリオットへ。日本生まれ。2012年に創業家外初のCEOに。現在はガンと闘いながら世界最大のホテル帝国の経営を指揮する。

文=ビズ・カールソン 写真=アーロン・コトフスキー 翻訳=町田敦夫

この記事は 「Forbes JAPAN 4月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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