テクノロジー

2020.03.11 08:30

スペースXの「衛星インターネット」、年内に北米で始動へ

イーロン・マスク(Photo by Win McNamee / Getty Images)

イーロン・マスク(Photo by Win McNamee / Getty Images)

イーロン・マスクが設立したスペースXは、「スターリンク」と呼ばれる衛星コンステレーション(衛星の群れ)で、衛星インターネット網を構築し、地球上の全てのエリアにネット接続を提供しようとしている。

一部の天文学者たちは、これらの衛星の群れが宇宙観測の妨げになると危惧しているが、マスクはその考えを否定した。3月9日、ワシントンDCで開催された2020 Satellite Conferenceの会場で彼は、スペースXが天文学者が懸念する事態への対処を進めていると述べた。

「当社のチームは天文学コミュニティからの懸念の払拭に向けて、全力を尽くしている。衛星の群れは天体観測に一切影響を及ぼさないと確信している」と彼は話した。

マスクによるとスペースXは、衛星のフェイズドアレイアンテナを白ではなく黒い塗料で着色する実験を進めているという。同社は今年の年初に打ち上げた衛星の底部を、太陽光の反射を最小限に抑えるために黒く塗っていた。

マスクはさらに、衛星にサンシェードを取りつける試みも始動させたという。これにより、衛星の色が変化することになるという。スペースXは今後、最大で4万2000基の小型衛星を宇宙に放出し、地球を覆うコンスタレーションを構築する計画だ。現状でアクティブな軌道上の衛星の数は、2000基程度とされている。

同社が既に打ち上げた衛星の数は300基に達し、2020年の終わりまでにさらに1000基以上を打ち上げる。しかし、関係者の多くが今後、衛星同士が衝突する危険を指摘しており、既存の衛星よりも輝度が99%も高いスペースXの衛星がもたらす「光害」を問題視している。

昨年11月には2人の天文学者が、スターリンクによって天体望遠鏡による観測が妨害されたと報告した。ヨーロッパ南天天文台(ESO)の科学者らも先週、スターリンクが今後の宇宙研究の妨げになると指摘していた。

今回のイベントでマスクは、以前から噂されている、スターリンクの分社化計画が事実ではないことも指摘した。スペースXは将来的に人類を火星に送り込む計画で、スターリンクの事業から得た収益は、そのミッションに投資する予定だとマスクは話した。

スターリンクによる衛星インターネット接続サービスは、今年後半に米国とカナダで利用可能になる見通しで、グローバル展開に向けた準備も進んでいる。ただし、サービスの利用料金についてはまだ明かされていない。

衛星インターネット分野でスターリンクの競合となる企業としてはアマゾンや、ソフトバンクが支援するOneWebなどがあげられる。

編集=上田裕資

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