テクノロジー

2020.03.10 11:30

スペースXの宇宙旅行は10日間で「58億円」、2021年に実施

スペースX クルードラゴン(Official SpaceX Photos)

米テキサス州ヒューストン本拠の「Axiom Space(アクシアム・スペース)」は3月5日、スペースXとの間で、民間人の宇宙飛行士を国際宇宙ステーション(ISS)まで往復輸送するミッションに関する契約を締結した。

イーロン・マスク率いるスペースXは、3人の民間人に宇宙旅行を体験させることになる。このミッションは2021年後半までに、有料で実施される。3人のツーリストらは既に代金を支払い済みで、Axiomが雇用する経験豊富な宇宙飛行士が、操縦を行う。顧客らは1日間をかけてISSにたどり着き、8日間を宇宙ステーション内で滞在後、1日がかりで地球に帰還する予定だ。

ツーリストらはISSに滞在中の米国人とロシア人の最大6人の宇宙飛行士と合流することになる。Axiomは乗客らにISS内で個室を用意する。AxiomのCEOのMichael Suffrediniは声明で「今回の宇宙旅行は、定期的に宇宙へ向かう旅の先駆けとなるものだ」と述べた。

Axiomは自社で独自の宇宙旅行プログラムも計画しているが、年に2回、ISSに向けて民間及び、プロの宇宙飛行士を送り届けていく予定という。今年1月に同社は、ISSに3つの取り外し可能な滞在用モジュールを取り付けると宣言した。このモジュールはISSが引退した後も、独立した宇宙ステーションとして利用可能という。

スペースXがNASAの宇宙飛行士を含まない、ISSに向けた有人飛行を行うのはこれが初めてとなる。ISS向けの民間人の輸送はスペースXにとって大きな前進となる。

スペースXがISSに向かう宇宙船「クルードラゴン」の無人テスト飛行を初めて実施したのは、2019年3月のことで、その後のテストで有人飛行に向けての安全性を確認した。クルードラゴンの初の有人テスト飛行は、今後数ヶ月以内に2人のNASAの飛行士を乗せて実施される。

スペースXは別の企業の「スペース・アドベンチャーズ」との間にも、宇宙旅行の実施に向けた契約を結んでおり、2021年に5日間をかけて地球を周回する宇宙の旅に、顧客らを送り出す予定だ。

スペースXのプレジデントでCOOのグウィン・ショットウェルは声明で、「当社は2012年からNASAと提携を結び、ISSに貨物を輸送しており、今年後半に初めてNASAの宇宙飛行士をISSに届ける」と述べた。

「そして今回、AxiomとNASAの支援により、宇宙ステーションに民間人を送る任務を行い、宇宙旅行の商用化に向けて新時代を切り開いていこうとしている」

参加者の氏名は間もなく公開


クルードラゴンの1座席あたりの費用は5500万ドル(約58億円)と試算されており、AxiomがISSに向かうフライトに支払う費用は2億2000万ドル以上にのぼりそうだ。これは莫大な金額ではあるが、2000年代にロシアがソユーズ宇宙船で7人の民間人に宇宙旅行を体験させた際の費用(1人あたり8600万ドル)と比べると、ずいぶん安い。

Axiomは同社の宇宙旅行プログラムに参加する人の名前を、今年後半に明らかにする計画だ。クルードラゴンは最大7人が搭乗可能であり、追加で予約を受け付ける可能性もあるという。

スペースシャトルは2011年7月に引退しており、スペースXはその後、NASAと共同で宇宙旅行プログラムを計画中の2社のうちの1社だ。もう1社はボーイングだが、同社は2019年12月のCST-100 Starlinerを用いた無人テスト飛行で、複数のトラブルを発生させていた。

編集=上田裕資

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