3月9日、東京株式市場で日経平均株価は1年2カ月ぶりに終値で2万円の大台を割り込んだ。新型コロナウイルスの影響で、世界経済が一段と悪化するとの懸念から、投資家のリスク回避姿勢が加速した。
また、外国為替市場でも、ドル円相場は一時101円55銭まで急落、2016年11月以来の水準をつけた。
この動揺はいつまで続くのか。為替市場の専門家二人に伺った。
動揺は行き過ぎ
マネーパートナーズのチーフアナリスト武市佳史氏は現下のマーケット状況について、「(新型コロナウイルス問題は)目に見えない懸念であり、ある意味、動揺は仕方ない部分はある」としながらも、「少し騒ぎ過ぎの印象は否めない」とする。
なぜなら、SARSもMERSもまだ治療法が確立していないが、市場でいま騒がれているわけではない。しかも、現時点で伝わる致死率は、それらの方が新型コロナウイルスを上回っている。
「つまり、いわゆる世界金余りバブルの調整のために、材料視されたにすぎない」と見る。
また、ソニーフィナンシャルホールディングス執行役員 兼 金融市場調査部長の尾河眞樹氏も同じく市場の動揺の行き過ぎを疑問視。その理由をこう説く。
「たとえば、3月2日と、3月4日の1000ドルを超える急激な米株価上昇を見る限り、市場参加者はどこかでリスクを取りたいと思っているようにみえる」。
しかし、一旦転がり始めた投資家の「リスク回避姿勢」は大きな収束のきっかけがないと止まらないのではないか。
確かに二人の専門家も、市場の収束は、「新薬の開発」などコロナ懸念の抜本的な収束がきっかけになるだろうと見ている。
コロナショックから復活するための処方箋は
では、新型コロナウイルスのワクチン開発の目処がつくまで、市場の動揺を収めることはできないのか。
尾河氏は「今回、米FRBが50Bpsの緊急利下げに踏み切ったが、残念ながら利下げではコロナウイルスの拡散を止めることはできない」と言及。そして、「すべきは、市場の過度な動揺を収束させることであるので、単独で場当たり的にそれぞれの中銀が動くよりは、いざというときにG7で協調行動をとれるように準備しておくことのほうが必要ではないか」という。
また、国内においても「自粛が続き、中小企業の資金繰りに問題が生じないよう、中央銀行としてはしっかりと資金供給でサポートする、あるいは財政政策などの政策は有効だろう」と指摘する。
このまま円高は進むのか
コロナウイルスの混乱が続く中、今後の為替市場への影響をどう見ればよいのか。
武市氏は「マーケットの混乱に関しては、各国政府・金融当局が押さえ込みにかかると考える。したがって、現在は手を変え、品を変えしながらネガティブを煽っているが、織り込んでしまえばそこから先には進まないと考える」と楽観も示す。