また、尾河氏も「まだもう一段下げる可能性はある」としながらも、徐々に落ち着いていくとみている。
「FRBの緊急利下げは長期金利の低下につながったものの、ここのところ日米金利差の動きと、ドル円の相関性は崩れ、金利差が縮小してもドル円はあまり動かなくなっている。米長期金利が史上最低水準となるなかで、日米の金利差もかなり縮小しており、細かい金利差の動きに為替相場が反応しづらくなっている可能性がある」とする。
また、円高の企業への影響に関しては、「過去約3年間、ドル円は概ね105-115のレンジ内で推移しており、現在の水準であれば特に企業にとっても問題ない」と見る。ただ、「105を明確に下回った場合には、レンジが100-110にシフトする可能性もあるため、注意が必要だ」。
リスクオンの4つの要因
このショックの中に、ポジティブな芽を見つけることはできないのか。
武市氏は、米金利低下観測から、ドル売りの進行がある程度すでに織り込まれた感があることを指摘する。また、「今年は米大統領選挙のため、再選に向けたトランプ大統領も景気対策を打ち出しやすい」。
一方、尾河氏も「この低金利環境下で、市場参加者は基本的にリスク志向があるように見える」とし、「振り返れば、SARSの時とは異なり、2月中旬までは米国株が連日史上最高値を更新するような環境だった」と指摘する。
また、そのリスクオンの背景には4つの下支え要因があるという。
1つは、循環的な米国経済の良好さ。2つめは、大統領選に向けて米中関係がいったん収束すること、そして、3つめにトランプ政権による減税への期待、最後に、昨年の利下げの効果による景気の下支え、だと述べる。
その上で、「今回のさらなる緊急利下げもあり、感染拡大が収束さえすれば、再びリスクオンの地合いに戻る可能性が高い」。
正しく懸念し、リスクの分散を
新コロナウイルスによって、世界的な視界不良が起こり、マーケットに不安や警戒心が増大する中、投資家が気をつけることはあるのだろうか。
武市氏は、あらゆるところにリスクは存在するとしながらも、「それでも交通事故が怖いといって『車に乗らない』『外に出ない』ということはしないだろう。感染症も同じ。楽観は禁物だが、過度に悲観するのではなく、正しく懸念する姿勢が必要」と述べる。
そして、「『落ちてくるナイフは掴むな』という相場の格言もある」と尾河氏。
「暴落の最中に買うのは危険が伴う。その場合は、金額を分けて、さらに下落しても買える余地を残すのがベター」と提案する。また、「特に今回は相手がウイルスであるため、リーマンショックの時のような金融ショックとは異なる。いったん収まったように見えてもまだ荒れるリスクも残っているため、アセットクラスの分散や、買うタイミングの分散などをお勧めしたい」。