ビジネス

2020.03.11 22:00

ビジネスにおける価値の創造は芸術の価値と似ている


ビジネスと音楽に共通する価値


石丸:経済人では、メセナ大賞を取るなど文化活動に力を入れているベネッセホールディングスの名誉顧問、福武總一郎氏の有名な言葉に「経済は芸術のしもべである」というものがあります。文化はわかりやすい投資対象ではありませんが、本来は文化は経済と同等の価値をつくれるはずです。経済面からアニメなどの文化がクールジャパンとして注目されますが、利益を生み出すこととは違う文脈でオーケストラなどの芸術があります。何千年と愛されているクラシック音楽にはやはり違う価値があるはずなのです。

佐藤:福武さんのような活動を追う多くの若手経営者も出てきています。岡山では、ストライプインターナショナルの石川康晴社長も文化支援活動に積極的です。

石丸:日本では経済の価値を追う時代が長く続いてきましたが、価値は本来お金だけのものではないです。経済の価値だけでは100年続く企業はつくれない。お金ではない本来の価値を取り入れたところが、時代を超えられると思います。価値というものは目に見えない。ビジネスにおける価値の創造は芸術の価値と似ています。

佐藤:そうした価値のつくり方を理解している経営者が、いま芸術の分野に興味をもち出しているというのがあるのかもしれませんね。

石丸:芸術にはさまざまなものがありますが、「第九」は日本人になじみ深く、日本でクラシックを広める突破口となりました。東西冷戦の象徴のベルリンの壁崩壊後の記念コンサートで演奏されるなど、時代の変わり目にふさわしい楽曲です。「第九」が多くの人々にとって、クラシックや芸術を人生に取り込んでもらえるひとつのきっかけとなればうれしいです。


石丸恭一◎公益財団法人東京フィルハーモニー交響楽団専務理事兼楽団長。武蔵野音楽大学器楽科卒。在学中にABC交響楽団入団。ベルリン留学を経て、東京フィルの奏者として活動後、運営に携わる。公益財団法人軽井沢大賀ホール専務理事、東京オーケストラ事業協同組合理事長兼任。

photograph by yOU (portrait) | edit and text by Mariko Kojima

この記事は 「Forbes JAPAN 2月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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