経済・社会

2020.03.10 06:30

世界で広がる新型コロナパニック。いま企業が行うべきリスクマネジメント


企業が受ける影響はどのようなものか


厳しい政策対応が必要とされる場合、企業は短期的な影響、および予想としては低いものの長期的な結果という形で、否応なく影響を受けるでしょう。

何億人もの人たちに影響を与える旅行規制と検疫によって、中国の工場では労働力と部品が不足し、ジャストインタイムのサプライチェーンが混乱、テクノロジー、自動車、消費財、医薬品などの産業全体で販売に関する注意事項が出されている。中国における原材料消費の減少に伴い商品価格が下落しており、生産者は減産を検討している。モビリティと業務の混乱で中国国内の消費量が大きく減少したため、航空、留学、インフラ、観光、エンターテイメント、ホスピタリティ、エレクトロニクス、消費財、高級品など、複数の部門で多国籍企業が苦境に立たされている。

全般的にみると、中国の今年のGDP成長率は0.5ポイント、そして、世界のGDP成長率は少なくとも0.1ポイント低下し、中国への依存度の高い先進国市場と新興市場に、貿易、観光、投資といった形で波及するでしょう。これらの国の中にはもともとの経済の脆弱性が表面化した国もあれば、保健制度に弱点があり、パンデミックに対するレジリエンスが低い国もあります(その双方が重複することも)。

アジアとアフリカの多くの国では、感染症が発生した際に患者を特定、隔離し、治療するための監視能力、診断能力、そして病院の対応能力が不足しています。場所を問わず、脆弱な制度は伝染の可能性を増加させ、社会的・経済的な影響を与えることから、保健対策の安定性にとって脅威となっています。


イメージ: COVID-19 impact / Statista

企業がパンデミックへの対応能力強化に投資すべき理由


感染症流行とパンデミックはそれぞれ、単独でも企業に対するリスクであると共に、現在ある傾向や脆弱性を増幅させる要因でもあります。長い目で見ると、企業にとって新型コロナウィルス流行が、保護主義の規制やエネルギー効率上のニーズに加えて、自社のサプライチェーンに関して、感染症の発生しやすい地域としてのリスクを再評価し、地域ごとに再編成する上でも新たな動機となるかもしれません。

また、企業は、米中貿易対立の再燃といった政治的リスク、経済的リスク、そして保健対策の安定性に対するリスクの増大に対応していかねばなりません。感染症発生や経済的混乱が長引くことによって、香港そして中国本土で国民の不満があおられ、イノベーションや成長を抑えつけるような、抑圧的な措置を招く可能性もあります。新興市場での成長のつまずきが、急速に増加している労働力の活用を困難にし、社会不安、政治的な不透明感、そして医療制度への投資不能につながっていくことも考えられます。

企業の業務継続、従業員保護、市場維持といった一般的な懸念を超えて、企業も国家も複雑で発展しつつある相互依存的な関係が、パンデミックや他の危機の悪影響を増幅させるリスクとなることをふまえ、この関係を新たな目で見直していくべきです。

パニックやパンデミックへの対応度を軽視してきたサイクルを考慮すると、新型コロナウィルスが封じ込められたなら、世界の大半は無頓着な状態に戻ってしまい、不可避である次のアウトブレイクに対して準備がおろそかになったままということも考えられます。新たに浮上するグローバルなリスクに対抗すべく、戦略的・事業的・財務的なレジリエンスに投資する企業は、対応策や復興において有利な立場に立つことができるのです。

(この記事は、世界経済フォーラムのAgendaから転載したものです)

連載:世界が直面する課題の解決方法
過去記事はこちら>>

文=Richard Smith-Bingham, Kavitha Hariharan

タグ:

連載

新型コロナウイルス特集

ForbesBrandVoice

人気記事