米巨大フェス「コーチェラ」も中止の懸念、音楽業界に動揺

昨年のコーチュラ・フェスティバル(Frazer Harrison/Getty Images for Coachella)

昨年のコーチュラ・フェスティバル(Frazer Harrison/Getty Images for Coachella)

新型コロナウイルスの感染拡大の影響は様々な領域に及び、米テキサス州で3月17日から開催予定だった、音楽とテクノロジーのイベント「SXSW(サウス・バイ・サウス・ウェスト)」もキャンセルになった。

カリフォルニア州では4月10日から全米最大規模の音楽フェス「コーチェラ・フェスティバル」の開催も予定されているが、その開催を危ぶむ見方も浮上した。SXSWが昨年、テキサス州オースティンにもたらした経済的恩恵は3億5600万ドルだったと試算されている。

一方、昨年のコーチェラ・フェスティバルの経済規模は、10億ドルを上回ったとの試算もある。フェスのキャンセルが相次げば、エンタメ業界を巨大なダメージが襲うことになる。

「他のフェスのプロモーターからも、キャンセルの申し入れが相次いでいる。コーチェラのタイミングに合わせ、LAに向かうはずだったアーティストもフライトをキャンセルし、現地でのレコーディングが延期になるケースも出てきた。影響は業界全体に広がりそうだ」と、某有名アーティストのマネージャーは匿名を条件に語った。

音楽業界では近年、ストリーミング収入が増大したが、アーティストの多くはツアーをメインの収入としている。音楽業界メディアのPollstarによると、2019年に全米トップの収益を生んだ100のツアーの売上の合計は55億5000万ドル(約5800億円)で、2015年から41%の伸びだった。

世界最大のコンサートプロモーターであるライブネーションは昨年、115億ドル以上の売上を叩き出したが、同社CEOのMichael Rapinoも感染拡大への懸念を示した。ライブネーションの株価は現在、52週ぶりの最安値を記録している。

ライブネーションが今年予定する大型コンサートの70%が、6月以降の開催予定で、ジャスティン・ビーバーやレディ・ガガなどの大物のライブを控えている。しかし、グリーンデイやアヴリル・ラヴィーンのアジア地域でのツアーは、新型コロナウイルスの影響で既に中止が決定した。

本格的なフェスシーズンを迎える夏までに、感染拡大が収束に向かえば、ツアーは予定通り開催されるだろう。しかし、先日はマイアミで開催予定だったウルトラ・ミュージック・フェスティバルが中止になり、それに続きSXSWのキャンセルが決まったことで、関係者の懸念は高まった。

コーチェラのような超大型フェスのキャンセルは業界のエコシステム全体に、影響を及ぼす。主催者はチケット売上やマーチャンダイジング収入を失うなけでなく、リハーサルの開催費用や会場の設営費用、ホテルやエアビーアンドビーなどの宿泊費の回収も難しくなる。

ストリーミング業者には朗報


「コーチェラの主催者は、現状ではライブを予定通り行うと述べている。しかし、我々は既に1アーティストあたり100万ドルから200万ドルの製作コストを支払っており、中止になった場合に保険が適用されるかどうかは不明だ。私個人としては、ライブの開催が決定するまで、新たな出費を控えるつもりだ」と、前出のマネージャーは述べた。

音楽ライブ以外にも、バスケットボールの試合や映画などが影響を被る可能性もある。大規模なイベントが無観客で開催され、ストリーミング中継限定になる可能性もある。その場合は、伝統的なライブイベント業者のチケット収入は大幅に減少する。

そんな中でも収入の増加が期待できる業種としては、ライブイベントのストリーミングを手がけるStageitのような企業があげられる。同社の創業者のEvan Lowensteinは2012年のフォーブスの取材に、将来的な売上増大の見通しを語っていた。

編集=上田裕資

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