お金がなくなると思考力が低下する? 貧困手前の「負のループ」に陥らないために

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また、インドの農業地帯で農民に対して、サトウキビの収穫前でお金が足りない状況のときと、収穫後でお金に余裕がある状況のときに、同じような調査を行った。前述の実験が貧困層と富裕層という、そもそも違う人たちを対象としたのに対し、この実験では同じ人たちに対してお金の有無の違いがどう影響するかを検証したのだが、その結果も、やはりお金があるときよりも、ないときのほうが能力の悪化が認められたという。

お金がないことで選択ができなくなり、強いストレスを受けたり、認知や実行能力が悪化したりするという話をしてきたが、お金がないことは、さらに根深い問題を引き起こす。

それは、負のループから脱却できないということだ。貧困に陥る理由はさまざまだが、そこから抜け出すための解決策の1つに「自己成長する」というものがある。そのためには自己投資が必要なのだが、それには英語能力を身につけたり、資格を取ったりするなど、いろいろなものがあるだろう。

しかし、目の前に非常にコストパフォーマンスが高い自己投資のチャンスが来たとしても、お金がないとその投資もできない。

よく「貧困の連鎖」という言葉が使われることがあるが、これは貧困世帯に生まれた子どもが、親に続いて貧困状態に陥るという二世代間だけの話ではなく、自分のなかだけでも起こりうることなのだ。

しっかりとお金との距離感を保つ


昨年の10月に消費増税が上がり、直近では新型コロナウイルスの影響もあって、日本経済はかなり厳しい局面となっている。このような状況下、急に悪評が広がり始めた人たちの噂を耳にする機会が増えた。「難癖をつけて支払いを遅らせようとしている」とか「怪しい情報商材を売ろうとしてきた」などという人たちの噂だ。

おそらく、10月以降の経済環境の悪化によって、資金繰りが厳しくなったり、売上が大きく減少したりしているのだろう。環境の悪化に伴って、前述のような悪評をたてられてしまう行為をしてしまったのだろう。

しかし、一度、このような悪評が立ってしまうと、経済環境が好転したときに、信頼を失ってしまっている可能性も高い。まさに「貧すれば鈍する」ということわざどおりになってしまう。

必要以上に稼ぐ必要はないかもしれないが、ある程度のお金がないと、さまざまな悪影響が生じることも事実だ。こんな時期だからこそ、しっかりとお金との距離感を保ちつつも、その重要性をいま一度確認することも大切ではないだろうか。

連載:0歳からの「お金の話」
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文=森永康平

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