「変化は一晩では起こらない」なぜ日本は他国よりジェンダーギャップ解消が遅いのか

世界経済フォーラム日本代表 江田麻季子


世界経済フォーラム日本代表 江田麻季子

──今後LGBTQ含めてあらゆるジェンダーのリーダーが増えるためには、どのような視点や工夫が必要だと思いますか。

先ほどの話にもつながりますが、リーダー自身がいろいろな立場の人の話に耳を傾ける機会をもち、また様々な考え方の人がいることを認識すると良いのではないでしょうか。私を含め、人は自分の経験から物事を判断しがちだと思います。判断をする上で、自分とは違う立場の人がどのように考えているのかを認識することは、想像力が伴うということ。

想像力がなければ、どうしても固定観念や今までの経験に基づいた判断になってしまう危険があります。リーダーが自らさまざまな人たちの意見を聞いて、学ぶことが大切ではないでしょうか。

──日本では少しずつ多様な働き方が認められるようになってきました。昨今のコロナウイルス感染拡大に伴い、改めて「リモートワーク」や「オフピーク通勤」が国によって推奨され、注目されています。

柔軟な環境や、個性が活かせる働き方ができることはもちろんですが、リモートが難しい職への理解も必要だと思います。

世界経済フォーラムは、リーダー層のマインドセットを幅広いものにするためにも、官民のステークホルダーの方々との会合も開催しています。そうした機会も含め、今後は様々な取り組みをデジタル化できないか、など検討しています。

新型コロナウイルスに関しては、今後どうなるかわからない中、世界経済フォーラムは、官民のプラットフォームとして、WHOやグローバル企業のリーダーとの協力のもと、最新の情報を共有しています。どう対処をしていけば事態が収束し、かつ経済的インパクトを抑えられるかという話し合いは、早い段階から始めています。

今回の件で、改めて世界が繋がっていることへの認識が必要です。サプライチェーン、技術、そして事業などもその国だけでは完結できない。材料や分業体制、金融なども全て繋がっている。だから国際協調は必至です。どうしようと立ち止まっているのでなく、最新の状況を透明性をもって共有する事が大切だと思います。

──国際女性デーはそもそもNYのデモを起源として、女性の勇気と決断を称える日とも言われています。ご自身の半生の中で、女性としてもっとも大きな勇気ある決断には、どのようなご経験がありますか。

男性になったことがないので「女性だから」というのは、正直分かりません。とりわけ「女性だから頑張ったこと」もありません。

ただ、私の場合は男女雇用機会均等法の第1世代で、日本にチャンスがないと思ったからアメリカに行き、また外資の企業に務めました。一大決心というよりは、その道はサバイバルでした。

完璧ではないけれど、時代の状況は変化しました。大学を卒業する前の学生さんにお会いすると「変化はまだまだ足りない」というお話になりますが、これから社会に出ようとしている方々の未来は、いまとは全く違う世界になっていると思います。諦めてはいけません。

もっとその変化のスピードを速くすることが、私たちの世代の仕事だと考えていますが、思っているよりも速く物事は変わっている気もします。
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文=督あかり 写真=平山尚人

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