ライフスタイル

2020.03.14 10:00

クラシックな料理に嬉しくなる 夫婦が営む官庁街のビストロ


カフェ・デ・ミニステールは、夫婦で営んでいる。ご主人のジャンが厨房に立ち、奥さんのロクサーヌが34席あるフロアでサービスを担う。他にスタッフはいない。ロクサーヌが経理処理に追われるときには助っ人を頼むこともあるが、それ以外は2人だけ。だからジャンはシェフでありながら、洗い物まで自分でする。

そして、長く愛されてきた、古くからある、ソースを伴うフランス料理を出していきたいと、朝は7時に出勤し、夜は12時まで働き通しだ。ずっと店にいるからと、昼と夜のレストラン営業時間外も、カフェとして店を開けている。

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ジャンとロクサーヌ。「はじめ全然相手にしてくれなくて、数ヶ月かけて口説いたんだよ」とジャン。

常連に名前入りのナプキンリングを


そんな2人の店は、この2月に1周年を迎えた。それを記念して、2人は常連客に名前入りのナプキンリングをつくることにしたそうだ。

かつてレストランでは、常連客のナプキンをキープする風習があった。昔ながらのビストロに行くと、各人の名前が充てがわれた、1人分ずつに小さく区切られた棚や引き出しが残っていることがある。いまはもちろん、都度ナプキンは新しいものに変えられるが、そのエスプリを表現するナプキンリングだ。

店はアンバリッドに近い7区の国民議会のオフィスビルから徒歩1分ほどで、他にも国防省や教育省などが構える官庁街という場所柄、ランチの客は、ほとんどが近辺で働く人たちだ。

日によって、同僚同士で来ていると思われる和気藹々のグループのテーブルもあれば、ほとんどがきちんとしたスーツ姿の男性のこともある。そのなかには、週に4日通ってくる人もいるほどで、1周年記念のナプキンリングは全部で100人分になったらしい。

その話を聞いた翌週、食事に行ったら、「Akiko」と名前の入ったナプキンリングを出してくれた。こうして私は、自分にとって、人生初の名前入りナプキンリングを手にした。

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バスク地方の職人さんにお願いしたというナプキンリング

連載:新・パリのビストロ手帖
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文・写真=川村明子

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