経済・社会

2020.03.07 17:00

知らない、はリスクだ。堀潤が「わたしは分断を許さない」に込めた覚悟

「わたしは分断を許さない」の堀潤監督
「わたしは分断を許さない」というタイトルに込めた思いを語った堀潤監督

「わたし」がこれだけは共有したいこと


「わたしは分断を許さない」という映画のタイトルだ。この「わたし」は堀自身でもある。強いメッセージだが、コピーライターと話し合いを重ねて決めたという。

コピーライターによるコンセプト案では「声を上げる」というものがあった。世間の忘却や無関心に対して、消えそうになった人たちが声を上げる。これを聞いて、「堀、お前も声を上げろ」と言われているようだったと振り返る。

「わたしは分断を許さない」というのは、価値の押し付けではないだろうか。葛藤もあったが、左右のイデオロギーや対立があったとしても、「これだけはみんなで共有したいこと」として、タイトルを決めた。

堀は、「分断を手当てする」という言葉もよく使う。これにはどんな思いがあるのだろうか。

「いち個人が分断を解消できるとは思っていません。国家間の争いや対立は歴史的に長く、大きな隔たりがあります。ですが、傍観していては次の分断を生み出してしまう。そんな痛んでいる場所にそっと手を当てよう、ということです。いろいろな場所で、手当てなら誰でもできるのではないでしょうか」

紛争や災害、政治的な弾圧などによって分断された国内外の現場を見てきた堀は、「経済合理性が優先され、発展していく世界では、個人の自由や権利があっという間に凌駕されてしまう」と語る。だが、「私は何もできない」と無力感に苛まれる必要はないという。

「できること、あるんじゃないですか。まずは知るだけでも変わることがたくさんありますよ」


Forbes JAPAN Webでは、新連載「#分断に思う」を展開します。炎上、ヘイトスピーチ、表現の不自由など、人々を分け隔てる「壁」の背景や原因に目を向け、乗り越える方法を探ります。皆さんの「分断」の経験や、記事の感想、ご意見をツイッターで「#分断に思う」にお寄せください。

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文=督あかり 写真=Christian Tartarello

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