知らない、はリスクだ。堀潤が「わたしは分断を許さない」に込めた覚悟

最新ドキュメンタリー「わたしは分断を許さない」を手掛けた堀潤監督


「わたしは分断を許さない」から。安田純平ら
シリア人ジャーナリストと話す安田純平(映画「わたしは分断を許さない」から)

シリア人ジャーナリストから「日本人はシリアの話をしても関心ないんじゃないですか」と問われると、安田は考えながら「そういう人は隣近所の誰かの死にも関心がないんじゃないですか。それを認めたら人間社会が崩壊しますよね」と答えたのだ。

「遠い国の話であったとしても、そこには日本人がサポートに関わっていたり、伝えようとしたりしている。映画を見ていただければ、全く関係ないわけではないことに気づかれるでしょう」と堀は明かす。

また、意外な現場も映し出されている。北朝鮮だ。その3文字を耳にした時、あなたはどんなイメージをするだろうか。本作では、日本人学生と日本語を学ぶ北朝鮮の学生が、国際交流をする場面がある。その様子を見たとき、あなたはこの3文字をどう捉えるだろうか。

「わたしは分断を許さない」から北朝鮮の場面
平壌にて、北朝鮮と日本の学生の国際交流の一幕(映画「わたしは分断を許さない」から)

「分断」リスクを回避する方法


堀は、分断を防ぐための2つの重要なポイントについて教えてくれた。

「知らないことによって、している選択」

「知っていたら、しない選択」

私たちは潜在的にどちらかの選択をしているということだ。つまり、知っているからこそリスクを回避できる可能性があるというのだ。

また、分断を描くとき、二軸の対立構造が生まれがちだ。例えば原発報道など、東京電力や国が「悪」であるという描かれ方だ。

そこで堀はこう指摘する。対立を生むのは「大きな主語」だと。例えば「中国が悪い」という意見があったとしよう。それは中国の何を語っているのか。政府か政治家か誰が悪いのか。

「対立や排除、排斥というのは、イメージから始まる。本当は徹底的に詰めて考えれば、『小さな主語』のジレンマが生まれます。そして各論を問いかけると『大きな主語』に戻ってしまいがち。『大きな主語』には、事実を覆い隠す魔力があります」

一方で、「小さな主語」は「わたし」の意見であり、責任が伴う。そして現代では、リスクにもなりうる。主語を明確にして語ることが、SNS上で炎上する懸念もあるためだ。そう語る堀が、今回の映画に背負った決意がある。

最新作「わたしは分断を許さない」について語る堀潤
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文=督あかり 写真=Christian Tartarello

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