知らない、はリスクだ。堀潤が「わたしは分断を許さない」に込めた覚悟

最新ドキュメンタリー「わたしは分断を許さない」を手掛けた堀潤監督

ジャーナリストの堀潤が手がけるドキュメンタリー最新作「わたしは分断を許さない」が3月7日からポレポレ東中野など全国の劇場で公開される。2020年は、東日本大震災による福島第一原発事故から、そしてシリア内戦から10年目を迎える年だ。

堀が世界中を駆け巡って見つめた「分断」の現場をつなぎ合わせると、人々を隔てる「壁」はどのように見えるのだろうか。

「#わたしは分断を許さない」という作品名からは、堀の強い決意のようなものが感じられる。そこには「ある狙い」も込められているという。

筆者は、時を同じくして表現の自由やヘイト、炎上現象について追ってきたことから、Forbes JAPAN Webで新連載「#分断に思う」を立ち上げた。世界各地で同様の悩みが連鎖しているからこそ、立ち止まり、分断に思いを馳せてみたい。

#分断に思う

「分断」が深まった10年、800時間に及ぶ取材記録


「ここ10年間で現場では『分断』が深まったと感じる。人々の疑心暗鬼は、やがて差別や排斥をうむ。一体なぜここまで、そして一体誰がこの分断を生んだのか。わたしは世界各地の現場へ取材の旅に出た。どうしても分断の手当てが今必要だからだ」(抜粋)

上に記したのは、堀潤がこの映画公開に合わせて寄せた言葉だ。

本作では、シリア難民やパレスチナ対立、香港デモや福島第一原発事故、沖縄の米軍基地問題など、堀が5年以上かけて取材した各地の「分断」の現場から、人々の暮らしや思い、葛藤などにフォーカスしたストーリーが同時多発的に描かれる。

その取材の回数は計り知れないが、映像時間にしていかほどか。堀は少し考えて、こう振り返る。「平均して3テラバイトのハードディスク5個分くらいかと。最初に編集した映像は6時間くらいかな」。仮に1テラバイトのハードディスクに約50時間の映像を記録できるとしたら、およそ800時間分にも及ぶ取材記録だ。

堀は2013年にNHKのアナウンサーから、フリージャーナリストに転身した。その年には日米の原発メルトダウンを追った、初のドキュメンタリー監督作品「変身 ― Metamorphosis」を公開している。前作は、東日本大震災後の2012年にアメリカ留学でUCLA客員研究員をしていた時に手がけ、東京電力福島第一原発事故の歪んだ実態と厳しい現状に立ち向かう人々を映し出した。

堀潤
映像を編集する作業場でもある、堀潤の「GARDEN」事務所で取材した

当時に比べても世界のあらゆる現場で分断が深まっている、と堀は言う。最新作「わたしは分断を許さない」では、アメリカ留学中に偶然撮影したパレスチナ問題に関わるこんなシーンも差し込まれている。
次ページ > 「分断」の端緒は気づきにくい

文=督あかり 写真=Christian Tartarello

タグ:

連載

#分断に思う

ForbesBrandVoice

人気記事