ビジネス

2020.03.09 12:00

オフィスにバリスタが常駐 情緒ある福利厚生が休憩の価値を変える

谷本幹人氏(右)と青栁智士氏(左)



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バリスタのオーナーシップが作る、“会社ごとの味”


「出社後に自然と社員がカフェの周りに集まり、雑談が始まるのが日常の風景に」「Gardenがきっかけで社内結婚にもいたった」導入企業からはそんな声が寄せられる。コミュニティを生むカギは、常駐するバリスタのオーナーシップだ。

Gardenで提供するコーヒー豆は5種類から選択でき、1~2週間ごとに入れ替わる。しかも、会社ごとに置かれるものは異なるという。現在、十数社のロースターと契約しており、常時100種類以上ある中から、バリスタが各企業のニーズにあったものをセレクトしているからだ。バリスタ自身が美味しい豆を見つけてきて、取引を働きかけることもあるという。UCCとの提携後も、様々なロースターと契約する方針は変わらない。

「従業員を一番知っているのはバリスタですから。基本はほとんどを任せて、それぞれの会社に最適なカフェを作ってもらいます。経営的にみると非効率ではあるのですが、企業によってメニューもバラバラですし、カフェの名前も自由にしています。
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Gardenはあくまで黒子。みなで場を作る意識や、愛着を持ってもらうことを第一に考えました。そのため、バリスタを採用するときは導入企業のカルチャーにフィットするかを見ますし、スキルだけではなく『話すことが好き』という点も大切にしています」(青栁)

訪れていたオフィスのバリスタは、積極的に社員に話しかけていた。そこには自然と輪が生まれ、交流がはじまる。知らない人同士の場合は、バリスタが仲介者となってつなげることもあるそうだ。



バリスタがオーナーシップをもつのは、豆のセレクトだけではない。

ある企業で「二日酔いに効く商品はないか」という声があったときには、オリジナルメニューの開発を進め、無添加のスープの提供をはじめた。また、コーヒーが苦手な人に向けて、野菜のスムージーやスープも提供。「心地よい時間、つながりを生む場所作りが目的であり、コーヒーが飲めない人を除外したくない」と、谷本氏は語る。

従業員の声を受け取るところから、メニューの変更や開発まで、基本は各拠点のバリスタに委ねられる。こうした積み重ねで、バリスタと従業員との間に関係性が構築され、日々のコミュニケーションの活性化につながっていく。谷本氏は、バリスタについて「産業医や保健室の先生のような存在に近いかもしれない」と表現したうえで、次のように語った。

「ここは路面店ではないので、“味を守る”という考え方はありません。むしろ企業と一緒にそこの味を作っていく。企業にマッチした店舗作りがバリスタのミッションです。結果、企業とバリスタの関係性によって、さまざまなコミュニケーションの形も増えてきています。

ある企業ではSlackに専用チャネルを用意して、事前注文できるようにしているほか、朝には『今日のバリスタは私です』という挨拶から始まり、その日のメニューやおすすめの豆などの情報の投稿。時には、『氷を買いに行くので15分いません』といった気軽なやりとりをしている。この関係性はGardenだからこそ生まれると思っています」(谷本)
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文/庄司智昭 取材・編集/小山和之 撮影/須古恵

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