LUCY ALTER DESIGN 代表取締役兼クリエイティブディレクターの青栁智士氏
とはいえ一定以上の規模の企業なら、オフィス内にカフェスペースがあったり、カフェが入居したりもする。また、オフィス内にマグネットスペースを設けているところも少なくない。その中で、同社が目をつけたのは“人のいる重要性”だった。
「場所だけあっても、行く動機がなければ人は集まらない。カフェがあっても、利用されない企業も結構多いんです。利用しない理由を聞くと、「コーヒーを淹れるのが面倒」「おいしくない」など、シンプルで複合的な理由です。そこで、Gardenが考えたのは“専任のバリスタを常駐させる”アプローチでした。
人が介在することで、おいしいコーヒーを淹れてくれるだけでなく、『いつものあれをお願い』で通じるような、関係性も提供できる。それは、自動販売機で買ったり、自分で淹れたりするものとは、体験価値としてもまったくの別物です。それと同時に、バリスタとのコミュニケーションを起点に、自然と人が集まる状態を意図的に作れるのではないかと考えました。
コーヒーを飲めるという機能的な価値だけでなく、場や人との関係性によって生まれる情緒的価値も作り出したいと考えているんです」(青栁)
コーヒーを待つ間、カウンターの前には同じタイミングで訪れた人の輪ができる。それが偶発性のある出会いとなって社員同士の接点を生み出していた。「場所って人がいないと意味がなくて、人が介在するからこそ動きが出て生きてくるんです」と青柳氏が語るように、バリスタがいることで確かに、場が形成されていることが感じられる。
人を介した場作りでは“コーヒー”も重要な意味合いがあった。日本茶に関連した事業を展開する一方、Gardenではコーヒーという選択をした背景には谷本氏の想いがあった。
「コーヒーは、コンテンツとしての求心力が高いんです。豆や焙煎、淹れ方、道具などを含め、それぞれにこだわるポイントが存在する。それだけでもコミュニケーションのきっかけになります。
また、会社でコーヒーを飲む目的には、『リラックスしたい』といった休憩の意味も含まれますよね。私自身コーヒーが好きで、高品質な豆から淹れるコーヒーが生活を豊かにする実感があったからこそ、休憩の質を上げる意味でもコーヒーは最適だと考えました」(谷本)