20年2月にCEO退任を発表し、6月からは会長を務める彼が、唯一無二のリーダーとして愛され、評価される理由とは。
「支持されるリーダー」ジェフ・ウェイナー
ビジネス特化型SNSとして世界トップシェアを誇るリンクトイン。ワイナーは、「ワーナー・ブラザース」や「ヤフー」を経て、08年に同社へ。
以降、会員数を6億7500万人以上、売上高を75億ドルまで伸ばすなど、めざましい活躍を見せてきた。立ち上げ当初は300人あまりだった従業員数も、現在では約1万6000人にまで増えている。
ジェフ・ウェイナーに学ぶ、リーダーとしての心得
従業員に愛されるリーダーの代表格ともいえるワイナー。従業員をまとめ、采配するスキルに長け、その人事力をひとつの武器としてリンクトインを躍進させてきた。
リンクトイン創設者のリード・ホフマンらIT界のスターとともに、スタンフォード大学で講演を行った際、ワイナーは「CEOとして私が学んだ最も貴重な教訓は、投手を長時間ゲームに置いたままにしないこと」と語った。
ある人物が担当の業務に適していないと感じたら、すぐにその業務やポジションから外すか、あるいは会社から出て行ってもらうということだ。
「誰かが与えられた役割に苦しんでいる場合、リーダーとして最も思いやりのない行動は、その役割のままに放っておくことだ」とも語っている通り、ワイナーはその人にとって適さない仕事に時間や労力を注ぎ続けることは、自信や方向性を見失うことにつながると考えていた。
人材を適材適所に「できるだけ優雅に動かすこと」はワイナーのリーダーとしての心得のひとつである。
ジェフ・ワイナーに学ぶ、「コンパッション」の真意
ワイナーは、リンクトインの経営の軸は「コンパッション 」、つまり「思いやりの心」にあると語っている。
コンパッションとは、日本語では一般的に「思いやり」「慈悲心」などと訳される言葉だが、ワイナーが率いてきたリンクトインでは、単なる優しさや同調ではなく、他者の苦しみや痛みの本質を理解し、その改善に向けて行動にうつすことを指す言葉として経営に活かされている。
「ビジネスにおけるコンパッションとは、もはやおかしななことではない。本当の思いやりとは、ただ感じがよく接して、いつも相手に同意するのとは全く違う。本当の思いやりとは、研鑽し卓越したものを相手に提供し、相手にも同じものを求めることだ。だから、時には厳しさがコンパッションであることや、困難なこともある」
2015年に「Wisdom2.0」という、マインドフルネス関連の世界最大級の国際会議でこう発言したように、ワイナーはCEO就任当初から「コンパッション経営」を宣言してきた。
コンパッションと、それに基づくリーダーシップを培うためにマインドフルネスに基づくプログラムを導入するなど、自身の定義するコンパッションを組織づくりやサービス開発に活かし、リンクトインに浸透させてきた。