テック系巨大企業のグーグルは、中核事業であるデジタル広告分野の売上が鈍化するなかで、新たな事業分野に期待をかけている。ヘルステック分野への進出が成功すれば、同社に多大な利益をもたらす可能性がある。また、低所得者コミュニティにとっては、より的確に自らの健康状態を管理する後押しになるだろう。
これまでの経緯
グーグルが最初にヘルステック分野への進出意欲を見せたのは、今から10年以上前の2006年のことだ。しかし、カルチャーバンクス(CultureBanx)が指摘するように、初代の「Google Health」プロダクトは、2012年にいったんサービスを終了した。
グーグルはその後、数年を費やして、疾病を特定する人工知能(AI)の開発に取り組んだ。目的は、アウトカム(医療の成果)の予測と、コスト削減だ。
アルファベットの最高経営責任者(CEO)を務めるサンダー・ピチャイはCNBCテレビの取材に対し、今後5~10年のあいだ、同社がAIを成果改善のために用いる分野として、最も大きな可能性を秘めているのは医療分野だと述べている。
ヘルステック分野に大きな期待を賭ける企業は、グーグルだけではない。アップルとアマゾンは次の収益源として、特に糖尿病対策に目を向けている。ヘルステックは巨大ビジネスであり、その市場規模は2025年までに1490億ドル(約15兆9943億円)に達する。そのうち糖尿病関連デバイスの市場は、2026年までに約380億ドルにまで膨らむとみられている。
糖尿病関連デバイスがあれば、糖尿病の基準値を上回るアフリカ系アメリカ人は、従来より安い費用で治療を受けられる可能性がある。一方、前述のテック系企業にとっては、糖尿病関連ビジネスで大きなシェアを獲得するチャンスだ。
糖尿病の治療費用は、決して安くない。しかも、製薬会社の度重なる値上げにより、米国におけるインスリン製剤の価格は、2001年から2016年までの期間に、定価ベースで最大353%上昇している。
WebMDの調べによれば、1型糖尿病患者の平均インスリン購入費用は、2012年の1万2467ドルから、2016年には1万8494ドルにまで跳ね上がった。糖尿病は、体の血糖値を制御する機能に異常が生じる慢性疾患だが、米疾病対策センター(CDC)の調査によると、アフリカ系アメリカ人は、糖尿病にかかる人の割合が全人種で2番目に多く、その比率は13%に達するという。