ビジネス

2020.03.06

「タブー」が市場を創り出す フェムテックの目指す未来

杉本亜美奈と中村寛子


2025年の市場規模は5兆円


「なぜ今フェムテックが話題なのか?」という質問に対して間違いなく言えることは、「これから確実に成長する産業だから」。2019年度のフェムテック関連事業に対する世界投資額は、ヘルスケア分野全体の約1.4%にとどまっています。ヘルスケア専門の投資家であっても、フェムテックへの投資経験がある人は20%未満。

一方で、フェムテックへの投資額の実数は、7年間で約60億円から約750億円まで急成長しており、2020年には1,300億円を超える見込みです。2025年の市場規模は5兆円と予想されており、全世界の女性の人口が35億人と考えると、それ以上の拡大も期待されています。ポテンシャルと成長率を考えると、この注目度も不思議ではありません。


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この背景には、フェミニズム的ムーブメントも少なからず影響しています。フェミニズムは、社会の成熟度を3段階で表現します。1段階目は、女性に選挙権などの社会的権利を与えるもの。2段階目は、社会進出という経済的権利を与えるもの。そして3段階目は「女性らしさ」や規範から解放するというものです。これはもちろん、男性らしくなるという意味ではなく、生物学的な性によって社会的な性のあり方を固定・強制されることはなくなるということです。

現在、欧米では女性が社会的地位や経済力を持ちはじめ、Economy ならぬ She-economy という「女性が社会進出をしたことで生まれた」新たな経済圏が誕生。社会は次の段階に進み、タブー視されてきた「健康・性」の課題を解決するフェムテックがブームとなっているわけです。

変わるライフスタイル、変わらない体


日本でも、女性の社会進出が進み、生き方や働き方も多様になってきました。しかし、いくら社会的な役割が変化しても、生理、妊娠、更年期など、女性が一生の間に経験する生物学的な機能は変わりません。ジェンダーギャップ指数からも明らかなように、国内の女性を取り巻く環境は、海外と比べるとまだまだ遅れをとっている現状です。フェムテック市場の盛り上げには、消費者一人ひとりの問題意識の成熟と、投資家からの理解が欠かせません。

凄まじい勢いで成長するフェムテック産業や、そこから生まれる新たな価値観や世界観は、人類史上もっとも難しいかもしれない「禁断の壁」を壊そうとしています。私たちが正しいと思い込んできた「性」のあり方は、新しい世代の間ではとっくに時代遅れになる可能性もあります。

例えば、Z世代と呼ばれる2000年前後に生まれたアメリカの若者たちで、自分たちを「完全に異性愛者」と答えたのは約50%でした。ジェイ・ウォルター・トンプソンのイノベーショングループが発表した2016年の調査で明らかになりました。異性愛者だけをターゲットにした市場があるならば、もはや時代に合わせて変化せざるをえません。

自分の体を知り、囚われてきた固定概念やタブーに気付くことができれば、女性だけでなく、全ての人がもっと生きやすくなるはずです。白黒つけない、正解のない、グレーな個を認めあう。そこから生まれるフェムテックプロダクトやサービスは、100年後の未来をどのように変えてくれるでしょうか。今から楽しみでワクワクが止まりません。

文・写真=杉本亜美奈

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