ビジネス

2020.03.06

「タブー」が市場を創り出す フェムテックの目指す未来

杉本亜美奈と中村寛子


起業、そして失敗


起業した当初は、ホルモン数値などで女性の体を可視化できるサービスを提供しようと考えていました。開発は順調に思えましたが、大きな2つの課題が立ち塞がります。

1つめは、私自身がフェムテック製品に対して「実際に使うのはちょっと…」だとか「一部の人しか使わないのでは?」といったタブーの意識があったということ。自分の体を知ることの大切さを頭では理解していても、いざ卵巣年齢を調べるとなると「まだ結婚もしていないのに?」といった固定観念がブレーキをかけてしまっていました。

海外のフェムテックムーブメントが作り出す社会の流れと、私が30年間蓄積してきた「当たり前」の間に矛盾を感じたのです。結局、この矛盾は今でも打破できていません。しかし、私がそうであるように、多くの女性たちもまた矛盾や不安を抱えて暮らしてきたのだということに気がつきました。

白黒はっきりさせるのではなく、グレーな自分を理解し、受け入れることが何より重要。会社として1つのサービスを提供するのも良いけれど、この気付きをもっと世の中に浸透させたい、そう思うようになっていきました。


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2つめは、日本で「女性のウェルネス・セクシャルウェルネス」についての課題がまったく言語化されていないということ。人権や環境問題などの社会課題は、世界中で長く議論されてきました。そのため、解決策も多数生み出され、市場は成熟しています。

しかし、女性の健康にまつわる話題への理解や価値観は世代や性別によって大きなギャップがあり、未だ多くの社会でタブー視される傾向にあります。ニーズがあるにもかかわらず、言語化・課題化されていないのです。良いプロダクト・サービスが生まれる土壌が育っていない状況です。当然、消費者もこの問題に無自覚であるため、市場の確立も難しくなります。

日本で初めてのフェムテックファンド


そこで私たちは、まず消費者の問題意識を育てることにしました。「Femtech Fes!」というリアルイベントでは、世界中から集めたプロダクトやサービスを日本全国で展示。初めて見る製品に直接触った来場者からは「友達に教えたい!」「次の生理が楽しみになった」と驚きの声が飛び出します。

フェムテック製品に触れることで、自分が当たり前のように受け入れていた悩みやモヤモヤに気づき、ニーズが生まれ、購入意欲へ繋がるのです。それと並行で、起業家の支援も開始。日本にフェムテック市場を作ることを目標に、孫 泰藏さん率いるMistletoeと共に「fermata Fund 合同会社」を立ち上げました。

良いアイディアに資金が行き渡るよう、エンジェルレベルでの投資を行っています。「女性のウェルネス・セクシャルウェルネス」の市場を築くために、fermata では、そんな「気づきの場」を提供しながら、世界で話題となっているフェムテック商品を日本・アジアに輸入、販売をしています。
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文・写真=杉本亜美奈

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