米メディア複合企業「バイアコム」のサムナー・レッドストーン元会長(96)は、ことあるごとにそう訴えてきた。
しかし経営陣はコンテンツではなく、市場の評価ばかりを気にして自社株の買い戻しを進め、高齢のレッドストーンの後継争いに明け暮れた。米メディア業界がデジタルの波に飲み込まれていくなか、バイアコムも迷走していた。
同社を原点に戻そうとしているのが、娘のシャリ・レッドストーン(65)だ。彼女は、米メディア史上類を見ない後継者争いを勝ち抜き、2019年12月に再統合したバイアコムCBSの会長に就任した。
同社は映画やテレビ番組の制作に130億ドルを投じるほか、ユーチューブやポッドキャストの制作会社も立ち上げている。デジタル領域に強い役員を積極的に起用するなど、シャリは変革に前向きだ。
「父はよく『小さな失敗では、しょせんは小さな成功しか得られない』と話していました。リスクは取らなくてはいけないのです」
シャリ・レッドストーン◎パラマウント映画スタジオやCBSエンターテインメントグループを傘下にもつバイアコムCBSの会長。弁護士だったが、出産後、父に請われて家族経営するメディアホールディングス企業「ナショナル・アミューズメント」に取締役として加わった。バイアコムとCBSの再統合に尽力し、2019年8月、同社の会長に就任した。