「みな早起きすべき」はナンセンス。これからのスマートな睡眠とは

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小林:実際、企業で睡眠改善のプログラムをする際にはデバイスを使うのですが、「自分の感覚と点数が一致していて面白い」という声をよく聞きます。「なんかスッキリした」と思ってアプリで確認すると90点、「だるいなー」と思ったら60点など、納得感があるようです。

僕自身はいま、点数を見なくても「今日いけるな」ってわかるし、睡眠がうまく行かなかった日は「◯時くらいに15分ぐらいの仮眠を取らないと、午後ベストパフォーマンス出せないな」と戦略的に考えます。まずはデバイスやアプリを使って確かめ、いずれなくても自分のコンディションがわかるようになれば理想ですね。

高橋:これが浸透していけば、朝型や夜型などではなく、良い睡眠がスマートだというような社会になっていきますね。



──アプリの言う通りにするのではなくて、そうしたソリューションを自分を知るきっかけにして、自分の感覚に気づき、身体性を取り戻していく。それってすごく人間的で面白いですね。

小林:自分のフィーリングと解析結果が一致してくると、自分の中の解析フィーリングができていく。するとデータを見なくても「今日は大丈夫だ」とかわかってくる。仕事の忙しさに波があったり、飲み会や接待で就寝時間にばらつきがあったりする人ほど、アプリがあるほうが「眠り浅かったな」と気づき、だから「今日は早めに帰ろう」とか「仮眠をとろう」とか行動変容のきっかけになると思います。

高橋:小林さんほどではないですが、私もその感覚がわかってきました。そのうえで、ユーグレナの経営会議の前日はちゃんとアプリを使いたいなと思います。いつも朝7時から始まるので、ディープスリープがとれているかがパフォーマンスに直結するんです。

小林:一番いいのは、経営会議を7時からやらないってことですかね。エビデンスを添えて、「この会議が夜型の人にとってどれだけマイナスか分かっていますか?」って(笑)。

──この領域は、もっと研究や開発が進んでいけば、例えば海外出張とか子育てとか、生活パターンの変化で睡眠の必要なものが変わるような時にも応用できるようになるのでしょうか。

小林:そうですね。シフト勤務者向け、育児中の親向け、時差ボケ対応など、ソリューションのバリエーションはたくさん考えられます。

時差ボケに関してはいまANAさんと動いていますが、飛行機の中でいつも通りの睡眠が取れるわけではないので、時差ボケ調整するためには食事とか、光の浴びる量とかタイミングとか、睡眠に限らず出発前からの調整も必要だったりします。

──いろんな人の、いろんなパターンのバイタルデータが必要になるわけですね。すると、睡眠×食など横軸の繋がりもカギになりそうです。人間の行動の管理というよりも、「人間性を取り戻す」みたいなテーマでいったら可能性が広がりそうですね。

小林:いい眠りが取れている時とそうでない時は全然違う。いい眠りを取ることで、潜在能力を完全にアンロックする。我々の取り組みが、人の潜在能力を解放するきっかけになればと思っています。

実はニューロスペースは、僕自身が睡眠に悩んだ経験から起業しています。かつて4〜5時間睡眠が長く続き、うつ病傾向や記憶障害になり、コンディションが悪いから仕事でミスをし、人間関係も悪化していくスパイラルがあり、そういう無駄をなくしたいなと。「睡眠は誰にも侵すことができない権利」。データを活用して、それをみんなが尊重できるような社会にしていきたいですね。



【前編】「眠り」が見えるとどう変わる? ジーンクエスト高橋祥子の場合

モデレータ=成田真弥(リアルテックHD) 編集=鈴木奈央 写真=山田大輔

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