ビジネス

2020.03.08

オフィスをときめかせる色彩の魔法

Getty Images

このオフィスはどうもしっくりしない。職場でそんな感覚を抱いたことはおありだろうか。あるいは、このオフィスは自分には合わないとか、仕事の能率が落ちると感じたことは? 防音オフィスブースを手がけるフィンランドの企業、フレイマリー(Framery)で、製品部門を統括するラッセ・カルヴィネンは、それはオフィスの「色」のせいだったかもしれないと話す。

カルヴィネンによると、色には人々の気分を変えるだけでなく、生産性にも影響を与える力があることが研究で明らかになっている。「だからこそ、企業は全体的な職場デザインだけでなく、従業員が効率的に、また満足して働けるようにサポートする、個々のスペースの仕様にも気を配るようになってきています。それには色に対する特別な配慮も含まれます」

金融サービス会社、JLL・アジア・パシフィックで「未来の働き方」の責任者を務めるベン・ハムリーは、人間の脳は光によって、今が一日のうちいつごろなのかや、どのくらい注意を働かせるべきなのかなどを判断していると説明する。そのため、色は従業員がだらけてしまうか、それとも頑張って今日必要な作業を終わらせようという気になるかに影響を及ぼすという。

同社でも、色彩と照明のデザインは未来の職場づくりの不可欠なツールになっているそうだ。ハムリーは、一般的には赤やオレンジは比較的刺激的で、情動をかき立てる色、青や緑は比較的リラックスする色と考えられる傾向があると述べ、こう続けた。

「とても興味深いのは、青はリラックスする色と捉えられることがある一方で、青色光(ブルーライト)、特に色温度が17000ケルビン(K)くらいのものは、ほかの色の光りに比べて人々を活動的にしやすい、少なくとも眠気を起こりにくくする点です」

なぜそうなるかというと、青色光には、睡眠を促す「メラトニン」というホルモンの分泌を抑制する働きがあるからだ。メラトニンは、約24時間周期で睡眠・覚醒のサイクルを繰り返す概日リズム(いわゆる体内時計)の調節に寄与している。スマートフォンなどでは最近、画面全体を暖色系に切り替える「ナイトシフト(夜間モード)」機能が利用できるようになっているが、これも青色光による体のリズムへの影響を低減しようというものだ。

最近の人気カラーは?


フレイマリーでは創業間もないころ、法人顧客はよく黒か白のブースを選び、なかにはその2色しか選ばない取引先もあったという。2000年代初めの企業オフィスではまだ伝統的なスタイルが幅を利かせていたから、それも無理はないだろう。

その後、職場に対する考え方は変わり、企業はオフィスを以前よりも堅苦しくなく、楽しめる場所にするようになってきている。オフィスは今ではもっと魅力的な場所になり、場合によってはブランディングの一環で整備していることもある。「もちろん、優秀な人材を引き寄せ、引き留めておくとともに、前向きな企業文化を生み出すという狙いからです」とカルヴィネンが解説する。
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編集=木内涼子

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