大浴場もレストランもない。シンガポールの投資家が軽井沢に建てた「本当に贅沢な宿」

ししいわハウス


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デッキに面したグランド・ルームには暖炉もある。奥の壁にはそれぞれのリビングルームにつながるドアが

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ヒノキの浴槽がある客室もある。壁も床も木材。触り心地を確かめたくてつい裸足で歩きたくなる

フェイさんは、このホテルではプライベートを3つのレベルで考えているという。1つは、個室で過ごすプライベート、2つ目は友達や家族とリビングスペースでくつろぐプライベート、3つ目は、グランド・ルームや共有スペースで、宿泊者同士が会話できるプライベート。私的な空間は確保しながらも、自然とゆるくつながれるデザインがなされているのだ。

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フロントもあるライブラリー。高い天井の開放感と木の使い方が美しい

また、「共有」もキーワードだ。冷蔵庫やキッチンは共有リビングに1つずつ。コーヒーでも入れながら、自然と会話が生まれるだろう。さらに、ホテルには大浴場もレストランもない。しかし、少し歩けば温泉施設もあるし、素晴らしいレストランも選び放題だ。「ホテルが備える施設が少ないほど、より多くの人や地域コミュニティとのつながりが生まれる」とフェイさんは言う。

お互いの存在を感じられる小さな温かみのある空間だからこそ、建築や素材も重要だ。館内はすべて、坂 茂によるデザイン、もしくは彼がセレクトした家具やインテリア。紙管を使った建築でも知られる坂 茂は、このホテルの内装にも紙管と木材を多く取り入れている。

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坂 茂らしい紙管を使った家具はベッドや、グランド・ルームのダイニングにも

「このプロジェクトでは、ホテルの美しいロケーションにふさわしい、独自のデザイン工法を生み出したいと思いました。ここにしかない特別な雰囲気を創造すべく、建築デザインからインテリアに至るまで、全て綿密に計画しました。客室内には、開放感あふれるスペースを生み出し、パブリック・エリアからは庭の美しい眺めを楽しみ、屋外へも簡単にアクセスできるようにしています。温もりのある雰囲気と統一感を生み出すために、ホテル主要部の素材には木材を選びました」(坂 茂)
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文=松崎美和子 写真=平井広行、松崎美和子(Huy Hoang氏、紙管家具)

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