アフリカで作って日本で売る ベナンで奮闘する日本人女性の教え

ベナンで生地の買い付けをする川口莉穂さん


日本での販路を着々と増やしている莉穂さんは、現在1年の半分ほどをベナンで過ごしている。生活の拠点はもちろん、アトリエの隣にある小さな部屋だ。初めてベナンの地を訪れてから、丸6年。どんなに慣れても、ベナンでの生活はけっして楽なものではない。

「ベナンの人たちと同じものを食べているので、食についてはもう慣れました。でも、停電もするし、断水もあるし。お湯が出ないので、ベナンにいていちばん恋しいのは湯船ですね」

同年代の友人たちが日本で20代を謳歌していたであろうその時に、ベナン人のためにアフリカの地で悪戦苦闘を繰り返してきた莉穂さん。これまでにお金を奪われたり、布を盗まれたりと、苦労は絶えなかった。シェリーココを法人化してから、まもなく3年。いまも莉穂さんは、片道2時間半の道をバイクタクシーの後ろに乗って、自ら生地の買い付けに行っている。

「最近、アフリカでの起業をする人は多いですが、こんなにお金のない起業家はいないんじゃないでしょうか」

そう言って笑う莉穂さんだが、その表情は明るい。ベナンに行くと頭痛が消えるというのだから、やはりここでの生活があっているのだろう。そして、何よりもベナンにはかけがえのない仲間がいる。


アトリエの外観

「ベルアンジュがいなければシェリーココは続けていません。もし彼女に裏切られたら、その時はシェリーココをやめます。彼女は7歳年下ですが、ビジネスパートナーであり、妹であり、そして親友でもあります。彼女と彼女の家族の存在は何よりも大きいんです。

ベルアンジュの弟とも話が合うので、いずれは彼に会社の会計や運転手をやってもらいたいですね。私はもともと国際協力や途上国支援がやりたくて協力隊にも入りました。シェリーココの活動を通して、ベナンの人たちを支えていきたいと思っています」

シェリーココ、つまり「愛しい人」のために、自分ができることをする。莉穂さんやベルアンジュを見ていると、何のために働くのかという、普段忘れてしまいがちな仕事の本質を再確認させられた。シェリーココで買ったネクタイを締めると、なぜかいつもより自分が引き締まるのは、気のせいだけではないだろう。

連載:世界漫遊の放送作家が教える「旅番組の舞台裏」
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文=鍵和田 昇

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