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現地の人向けの仕立て屋をしても、先行きは明るくない。そこで莉穂さんが目をつけたのが、日本の浴衣だった。幸いにして、前任の協力隊隊員が残していった浴衣が手元にあった。浴衣の縫製は直線的なものが多く、そのつくりはベナンの人も容易に理解できた。莉穂さん自身、アパレル関係の知識はないながらも、和裁ができる叔母に相談しながら試行錯誤して、ベナンの人たちとともに浴衣をつくり上げていった。

「ベナンの伝統的な生地であるパーニュは、柄が大きくて日本人が普段着るものとしては抵抗がある。でも、浴衣なら派手な柄でもいいので、ぴったりだなと思いました」

2015年と16年、シェリーココはオンラインで日本向けに浴衣を販売し、好評を博した。しかし、莉穂さんの協力隊隊員としての2年の任期が、時を同じくして切れてしまった。

「私がいないと、日本向けのビジネスは成立しないので、どうしようか考えました。でも、アトリエまで建てちゃったし、彼女たちを放っておけません。それに私自身、彼女たちと一緒にいたいと思ったんです。シェリーココって、ベナンのフランス語で『愛しい人』という意味なんです。ベルアンジュたちのことを思ったら、やめるわけにはいきませんでした」

覚悟を決め、戦略も変えた


莉穂さんは覚悟を決め、シェリーココを法人化した。それまでは、協力隊の活動の合間にボランティアとして手伝っていたが、シェリーココを本格的なビジネスにするには、これまでとは違った戦略が必要だった。

浴衣は季節ものなので、経営を考えるとそれだけでは難しい。そこで、柄が派手でも受け入れられやすい、エプロンなどのキッチン用品からポーチやネクタイなど、順次商品を増やしていった。



最初は3人でスタートしたシェリーココも、今では10人ほどの職人に仕事を回せるまでになった。しかし、まだシェリーココの仕事だけで、職人たちを安定して食べさせていけるほどにはなっていない。

扱う商材を布製品だけに絞るとアイテムが限られてしまうので、現在はパーニュのデザインを生かしたスマホケースやマグカップなど、新たな商品展開も検討しているという。

マーケティング面にも力を入れている。シェリーココの商品は、これまではオンライン販売が中心で、ポップアップストアも首都圏での開催が多かった。しかし、今年は日本の地方での知名度アップとファン獲得のため、全国各地でのポップアップストアやイベントへの出展を予定している。早速3月には福岡でのイベントが決まっており、夏に向けてその数を増やして行くつもりだ。

文=鍵和田 昇

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