「お菓子が軌道に乗ったので、次は惣菜のオンリーワンに挑戦しようと考え、最初に日清食品さんへお声掛けをしました。CMなどでの発信を拝見して、『世の中にどういう話題を提供すべきか』という視点に長けていると感じたからです。時代のトレンドや倫理観、人々の安心安全などの考え方に即したものであるかは、商品を開発する上で大事な要素となりますから」(馬場)
MOMOFUKU Noodleは、カップヌードルに根付いていたイメージを覆すべく、「健康」をテーマに開発された商品だ。さらに、複数の食材(ヤサイコロ)を選んで、「自分だけ」のカップ麺をつくれるコーナーも併せ持つ。
「ヘルシー志向も、カスタマイズできることも、まさに世の中の流れを見て取り入れました。加えて、パッケージのデザイン。“カップヌードルらしくない”おしゃれさを追求したのは、日清食品さんの提案によるものです。このような軸で開発したことが、お客様への驚きにつながったと考えています」(馬場)
「話題をギフトにする」店舗×ECの戦略
阪急うめだ本店のオンリーワン戦略には、もう1つ重要な側面がある。もともと「自家需要」(個人が自ら消費する目的)のアイテムを、あえて「ギフト」化した点だ。
「百貨店として、ギフト販売で収益を上げたい」という思惑はもちろんだが、そこには同時に、自分ではなく“誰かのため”に、ワクワクしながら購入する体験をつくりたい思いがある。
「人の手を介してモノが届くとき、ブランドをお互いに知っていると、話が盛り上がりますよね。それが手に入りにくいものだと、『私のためにこんな希少な商品を』となり、さらに話題が生まれます。誰かに『贈りたい』と感じてもらうには、“話題をギフト化する”という視点が非常に重要なんです」(馬場)
「実際にオンリーワンの商品は、阪急うめだ本店でのみ販売が開始されるため、購入するまでのハードルが高い。『ここでしか買えない』『今しか買えない』状態は、直営店の行列を生みます。それがさらに話題を呼び、人を集める。商品への、良い意味での渇望感がブランドに高い付加価値を生み出し、結果として収益をもたらしてくれるんです」(馬場)
ただ一方で、本店での販売を続けるのみでは、認知の広がりは弱い。そこで、タイミングを見て全国の催事場や駅、空港などに出店し、その後ECでの販売導線も引いているともいう。
「各地で限定商品があることをまずは知ってもらいつつ、本店を訪れて購入することができない方のために、ECのアナウンスも行います。とはいえ、“限定感”を損なえばお客様のワクワク感もなくなってしまうので、配慮が必要ですね。たとえばハウス食品さんとコラボした『カレーパンノヒ』は、ECでは毎月8日と発売日を限定しています。『今日しか買えない』ギフトにすることで、よりストーリーを持たせることができるんです」(馬場)