では、阪急うめだ本店の地階食品売場だから提供できるワクワクとは、何なのか。たどり着いたのは、オリジナル商品の開発による『オンリーワン戦略』でした」(馬場)
「たとえば、カルビーさんとコラボした『グランカルビー』。これは、阪急うめだ本店にしか店舗がない特別なポテトチップスです。特徴は、カルビーのポテトチップスの3倍の厚みがあること。フレーバーや食感にもこだわった結果、高価格ながらご好評をいただける商品になりました」(馬場)
高級ポッキーの「バトンドール」(江崎グリコ)に始まり、「ハッピーターンズ」「タネビッツ」(亀田製菓)、「cororo」(味覚糖)など、コンビニで容易に手に入るメーカーのお菓子が、阪急うめだ本店を通すことで全く新しいかたちに姿を変えた。地階食品売場のこれら「オンリーワン」直営店には日々、行列が生まれている。
では、顧客はそのどこに“ワクワク”を感じ、わざわざ店舗へと足を運ぶのだろうか。
既存のイメージを覆し、“ワクワク”する商品をつくる
阪急のオンリーワン商品の開発には、1つの共通戦略がある。それは「誰もが知るブランド」とコラボしていることだ。
消費者一人ひとりに製品のイメージが根付いているからこそ、覆したときに「発見」と「驚き」がもたらされる。このインパクトが重要だと、馬場氏は話す。
「誰もが知る『あの〇〇』を、誰も知らない商品へと変化させる。それが大きな驚きを生み、お客様の脳裏に残ります。ナショナルブランドの商品を“百貨店のフィルター”に通すと、どんな化学変化が生まれるのか。実験し商品化できるのが、阪急うめだ本店の強みなんです」(馬場)
そのため、阪急は亀田製菓やカルビーなど、名だたるブランドを持つ企業をパートナーに選び、コラボレーションを持ちかける。百貨店が販売しても違和感のないコンセプト、クオリティ、デザイン性を生み出すため、1つの商品につき、およそ1年〜1年半かけて開発するそうだ。
「ただ高級なだけでは、お客様は驚いてくれません。既存のブランドイメージを超えるためには、見た目だけでなく、とことん製法にもこだわる。先ほどのグランカルビー も、素材に特別なじゃがいもを使い、味わいを堪能できるよう揚げ方にも工夫を重ねました。私たちのアイデアで本当に『お客様の心を動かす』ことができるか、メーカーさんと徹底的に議論し、発売までに何度も試作をしています」(馬場)
さらに、ブランドの認知度に加えて、コラボする企業の“情報力”の高さにも着目していると馬場氏は述べる。たとえば、2018年から「MOMOFUKU Noodle」を販売している日清食品だ。